第3部

□第26の枝 不法侵入者と命懸け鬼ごっこ(後篇)
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 「どこだい、アナベルーーーーー!!!僕の天使ぃぃぃーー!!」


 「しつけえええええぇぇぇ!!!」




後ろから絶えず聞こえてくる叫び声に、堪りかねてドラコも叫ぶ。


親馬鹿の叫び声は、絶えず後ろに迫っているのだが、辛うじてドラコの方が先を行き、姿は見られていない。

だが、もしジェームズ・ポッターが2人に追いつき、その姿を発見したら、
アナベルを大事に腕に抱えて走っているドラコは、確実に親馬鹿の杖の標的にされる。



一瞬で恋人だとバレることはあるまいが、
少なくともその状況で、ただの通りすがりの面識もない間柄ですとは言えないだろう。




ので、ドラコは必死に走り続けていた。



どこかに隠れるという手もあるのだが、その場合、

天使を死に物狂いで探している親馬鹿がうろうろしている前を、ビクビクしながら隠れてやり過ごすという、
どこぞのホラー映画のような展開になってしまう。


これは、精神的にきつい。


おまけに、万が一見つかった時は、もう殺し合いしかその先には待ち受けていないのだ。





 「くそ、逃げ続けるしかないか。」




とりあえず、何らかのアクションを起こせる余裕ができるまで逃げるしかない。


そう考えるドラコの腕の中で、ハシバミ色の目の少女は、
おろおろと、叫び声が聞こえる背後を振り返っては、ドラコに目を戻すことを繰り返していた。




 「ご、ご、ごめんなさい、ドラコ先輩、パパが。ていうか、パ、パパ、怖い…。」




姿は依然見えないものの、そのあまりのジェームズの叫び声にアナベルはとうとう涙目だ。

ドラコは慌てて、走りながらも器用に、
そのミルクティーのような色をした髪に唇を寄せ、可哀想な少女を慰めてやった。

(どこまでもマメで恋人命な少年である。)




 「ああ、よしよし、ベル。可哀想に。確かに、怖いな。」



ほんと、確かに怖すぎる。

これは、本当にクリスマスまで…というか、クリスマスを過ぎてもアナベルを隔離するなんてこともしかねない。
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