第3部

□第28の枝 決戦の時!クリスマスダンスパーティー(後篇)
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今も、濃いブロンドのダームストラング生が残念そうに去っていくのを見送り、
その少女、アナベル・ポッターはほっと一息ついた。




 (やっぱり、あんまりウロウロしない方がいいのかしら。)




もうみんなパートナーは決まっているだろうに、声をかけられる回数が半端ではない。

パートナー云々ではなく、自分の容姿のせいで、声をかけられるのだということに思い当らない少女は、
またきれいな足音を立てながら、廊下を歩いて行った。




さて。

なぜ、アナベルが一人でいるのか。



パートナーの過保護な兄ハリー・ポッターと、
もはや、病気とさえ言われている親馬鹿ジェームズ・ポッターはどこに?という話である。




答えるならば、ジェームズ・ポッターはまだ到着していなかった。

本人は、10時間ほど前からやってくるつもり満々だったのだが、
先日の大騒動の二の舞にさせまいとするリリーにがっちり引き止められており、今現在むしろ遅れつつあったのだ。


一方で、ハリーは諦めの悪い女子たち数人に囲まれて、ダンスの約束を取り付けられているところだった。


なかなか勢いのいい、その女子の先輩方の邪魔にならないようにと、

アナベルは、ハリーが聞いたら泣きそうな親切心を起こして、
こうして席をはずし、廊下を散歩していたのである。



不用心だと、赤毛の友人などは言うかもしれないが、
人が続々と集まって来るダンスホール(大広間)にいた方が、

ひっきりなしに話しかけられては、
近くにいたスリザリン生に保護される…ということが繰り返されてしまったので、困って抜け出してきた次第。





 (あと少ししたら、校長先生の挨拶と、
代表選手のダンスでパーティーが始まるから、その頃に戻ればいいわ。)




その時には、いくらなんでもハリーももう解放されているだろう。

そう計算して、アナベルはここらで折り返そうとくるりと踵を返し、また歩き始めた。


と、そのとき、不意にぽん…と後ろから肩を叩かれた。




 「?あっ、Mr.オーディス!」




驚いて、振り返ったアナベルの前にいたのは、
さっぱりとしたブロンドの短髪に、緑の目をした中年の紳士だった。


休暇中、アナベルともそれなりに顔なじみになっていた、
ルシウスと同じ魔法省の高官である、ジェイソン・オーディス。

品のいい紺色のドレスローブを着こなしたオーディスは、アナベルを見てにっこりと微笑んだ。



 「やあ、こんばんは、Ms.マルフォイ。」


 「こんばんは。Mr.オーディスも、パーティーにご出席されるんですね。」



トライウィザードトーナメントに協力した魔法省の各部署から、
高官たちが数名ずつ、招かれているというのをドラコに聞いて知っていたアナベルは、さほど驚かなかった。

にこりと微笑めば、ますますオーディスは相好を崩し、素晴らしいと手を叩く。



 「なんともはや、今晩はいつも以上にお美しいね、Ms.マルフォイ!是非、わたしと踊っていただきたいな。」



そう言ってさりげなく前に出るオーディスに、アナベルも微笑みながら、さりげなーく後ろに下がった。

ここで迂闊な返事をしたら、今は不在の愛しい恋人にまた一頻り叱られてしまう。

なんとか、適当な返事をしようと、
アナベルが丁寧な断わりの言葉を捻り出す前に、再び後ろから別の人間の声がした。




 「おやおや、マルフォイ家の若奥様をナンパとは、相変わらずだな、ジョン。」




笑いを含んだ太い声でそう声をかけてきたのは、恰幅のいい中年を少し過ぎたあたりの紳士。

これまた、マルフォイ家ではよく見る顔で、魔法省の高官だ。
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