第3部
□第29の枝 成長した天使の卒業式
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(もう、この談話室ともお別れかぁ。)
それなりの成績で卒業でき、無事に就職先も決まって、すっかり心配事もなくなると、
代わりに、深い感慨がわいてくる。
ジニーはしばし立ち止まって7年を過ごした談話室を見た後、
花束を荷造りを終えたスーツケースに仕舞おうと、女子寮へ上がった。
「あら、ジニー。」
寝室に入ると、そこにはこれまた7年もの間同室だったルームメイトがいた。
「あら、なーに?その花束。まさか、卒業間際で告白でもされちゃった?」
「お馬鹿なこと言わないでよ。違います。これは後輩から。」
ジニーは笑いながら、小さな花束を潰さないように慎重にスーツケースの中にしまった。
それを見ながら、ルームメイトは納得したように頷く。
「そっか。監督生だと、そういうこともあるわよねぇ。」
「うん、ちょっと驚いたけど感動しちゃったわ。ところで、アナベルは?」
てっきり、寝室にいると思っていた親友の姿が見当たらず、ジニーははて?と首をかしげる。
もう、1時間もしない内に卒業式が始まるので、今更あちこちに出掛けているはずもないのだが。
不思議顔のジニーに、ルームメイトがそうそう!と思い出したように声を上げた。
「そうだわ、ジニー。わたしが最後に見た時、
アナベルは中庭で、後輩に囲まれたわよ。助けに行ってあげなさいよ。」
「た、助けに!?」
中庭で、後輩に囲まれている?
一瞬どういう状況だと思ってしまったが、すぐに合点がいった。
あのアナベルのことだ。
卒業を惜しまれて、慕っている後輩たちにプレゼント攻めにでもされているのだろう。
「あー、そうね。助けに行った方がよさそう。」
ジニーは頷いて、すぐさま立ち上がった。
頑張ってねーというルームメイトの声に送られ、ジニーは談話室を抜けて中庭へと急いだ…のだが。