第3部
□第29の枝 成長した天使の卒業式
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どうやら、遅かったというか、タイミング良くというか、
卒業間際のグリフィンドールの監督生、アナベル・ポッターは、後輩たちの対応を終え、
寮に、(なんとか)帰って来ようとしているところだったようだ。
ただ、廊下の途中で、そのアナベルと出くわしたジニーは、最初それが人間だとは思えず、
花束と小箱の山が、動いているのだと思った。
「…………;えーと…もしかして、アナベル?」
恐る恐る声をかければ、花束の山はピタリと足を止め、
辛うじて、その後ろから見知った親友の声がした。
「ジニー!?あー、助かったわ!ごめんなさい、ちょっと手伝ってくれないかしら。」
「もちろんよ。ていうか、よく潰れなかったわね。」
半ば感心しながら、ジニーが半分ほど花束と贈り物の山を受け取ると、
ようやく、そこからアナベルの姿が出てきた。
すらりとした美しい肢体を制服に包み、昔から変わらぬ優しい笑顔を浮かべた、ハシバミ色の目の少女。
もれなく女子たち全員があこがれる、その艶やかなミルクティーブラウンの髪は、
7年間でずいぶん伸びたが、腰の少し上で整えられている。
背も伸びたが、平均的な女子の身長に留まり、天使と呼ばれた愛らしさは健在だ。
ただそこに7年の歳月で、聖母のような落ち着きが加わったことで、
もはや、アナベル・ポッターは『めちゃくちゃ美人で、とんでもなく優しい天使』と、
後輩たちには、半ば神格化されていたりする。
ジニーは感心して、贈りものらしい箱や花束を見上げた。
「しかし、すごいわね。さすが、スーパー監督生。」
「なによ、スーパー監督生って。」
ジニーの言葉に、アナベルがおかしそうに笑う。
しかし、ジニーの言うことは間違っていない。
なんせ、この親友は文句なしの主席卒業が決まっており、監督生で、
おまけに、ホグワーツ特別功労賞が授与されることになっているのだ。
「勉強は頑張ったおかげで、首席で卒業できるのはいいんだけど…
なんで、私が、ホグワーツ特別功労賞なんてもらえるのかしら?」
私、なにかした?と、本人は未だにきょとんとした顔をしている。
相変わらずの少々天然ぶりに、ジニーはやれやれと苦笑した。
と、その時、後ろから声がかけられる。
「マルフォイ先輩!」
アナベルとジニーが振り返ると、そこには1年生らしい驚くほど小柄な少年が立っていた。
ネクタイは深緑と銀色。
スリザリンの1年生だ。