番外編話し集@

□デート日和のある日
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 「わぁ、ホグズミードって、結構いろんなお店があるんですねえ。知らなかった。」


 「ダイアゴン横丁にも負けてないと思うぞ。ホグワーツ生が来るから、学生向けの店も多いし。」





楽しそうに歩く少女に、ついつい口元を和ませながら、
ドラコは人ごみの中で少女を見失わないよう、白いその手を取ってしっかり繋いでおいた。


まだ、恋仲を必死にハリー・ポッターたちから隠していた頃は、手を繋ぐことはおろか、
人前で連れ立って歩くことも警戒していたくらいなので、

こうして、気兼ねなく手を繋げることがささやかながら嬉しい。





 「迷わないようにな、ベル。」


 「ひと多いですもんね。森の中なら、迷わない自信があるんですけど。」


 「普通の人は、森の中の方が迷うんだけどなぁ;」





アナベルらしいと笑いながら、ドラコは恋人の歩幅に合わせてのんびりと歩いた。

ジニーに兎カフェのチケットをもらったから行きたいと言われ、こうして早速やってきたが、
存外、街中に出てくるのもいいかもしれない。


ショッピングより動物との触れ合いが好きとはいえ、
アナベルも楽しそうに、軒を連ねる店のショーウィンドウを眺めている。





 (今度は、ダイアゴン横丁にでも行くかな。)





ドラコはそう思いながら、ちょこちょこと魅かれたように、
ショーウィンドウに寄っていくアナベルに大人しく手を引っ張られた。


ドラコも、こうして街中に出てくるのは嫌いじゃないし、
アナベルの買い物にならいくらでも付き合ってやれるのだが…こういう、街中デートには弊害があるのだ。


まあ、自分が油断なく対処していれば問題なかろうとドラコが思っている横にて。

アナベルはアナベルで、密かに街中デートの苦行を味わっていた。





 「見て見て、イケメンはっけーん!」


 「うわー、あのブロンド、天然ものかな?」


 「彼女連れかぁ、残念。」





そんな女の子たちの声を小耳に挟んで、アナベルはふすっとそれこそ兎のように鼻から息をついた。




 (ドラコ先輩がイケメンなのは知ってますー。)




わかる、アナベルだってドラコが人目を引く容姿なのはわかっているし、
イケメンを発見して騒いでしまう女の子の気持ちもわかる。


しかしながら、面白くはない。


というか、自分が釣り合っているのか不安になる。

久しぶりに森以外の場所へ一緒に出かけたので、この空気を感じるのも久しぶりだ。




 (私、変じゃないかなぁ…この服はドラコ先輩が選んでくれたやつだから大丈夫だろうけど。)




髪型も、いつもそのまま流しているが、
もっと時間をかけてセットしたらよかったかもしれないなんて後悔しつつ、アナベルは名案を思い付いた。





 「…ドラコ先輩、ウサちゃんカフェに行く前に我儘言ってもいいですか?」


 「アナベルの我儘なら、喜んで!」





ウサちゃんカフェってなんだよかわいいな!なんて思っている心中をおくびにも出さず、ドラコは大歓迎と頷いた。





 「服、選んでほしいんです!」


 「えっ、僕が選んでいいのか?」





ドラコは驚いた顔をしたが、アナベルがしっかり頷くと嬉しそうな顔をしてアナベルの手を引き、
早速、店を物色して当たりをつけた店内へ入っていく。


ドラコには以前も服をプレゼントしてもらったことがあるので、センスが抜群なのはわかっている。

何より、アナベルにはそのセンスがない。


昔から、アナベルの服は母のリリーが選んで買ってくれていたし、
それは、アナベルがこうして年頃になっても変わらなかった。


アナベルが自分で選んでみたらと言われて選ぶと、まず動きやすさを重視してしまうので、
ズボンしか選ばないし、喪服みたい…と言われることがほとんどだったのだ。

(だって、黒色が好きなのだから仕方ないではないか。)


ほかの女の子のような女子力はないかもしれないが、
それなら、せめてドラコの好きな服を着れば多少なりとも安心できるとアナベルは思った。
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