番外編話し集@

□ジニーの恋愛相談(前編)
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 「ふんふんふーん…。」





楽しそうに鼻歌を歌いながら、鏡の前で豊かな髪を梳かしている少女。


このホグワーツでは、長期休暇前で、
大分暖かくなってきた気候に釣られるように、空も快晴で、春らしい気持のいい日だった。


天気にも影響されているのか、

楽しそうな少女の流れるように艶やかな髪はロイヤルミルクティーのような色で、
同じ淡い色の瞳は、持ち主の気分を忠実に反映してきらきらと輝いている。





 「にゃーぉ。」





ベッドの上で、浮足立っている雰囲気の少女を眺めていた砂色の子猫は一声鳴き、
ご機嫌なご主人に同調した。


きっと、これから恋人の少年に会いに行くに違いない。

子猫には、確信があった。





 「なぁに、ナイル?一緒に来る?」





髪を梳かし終わったその少女、アナベル・ポッターは微笑んで、よしよしと子猫の小さな頭を撫でた。


ナイルと呼ばれた子猫の方はとんでもないと、ぷるぷる首を振る。


たまに、いい友人である仔狼に会うためアナベルにくっついて行くことはあるが、
恋人の逢瀬に逐一同伴したりなんて、野暮なことはしないつもりだ。


そんな子猫の様子を見て取ったのは、アナベルの他にもう一人。





 「行かないってさ。猫ちゃんがそう言うってことは、アナベル、今からデートね?」





そう言ったのは、ルームメイトで友人の赤毛の少女、ジニー・ウィーズリー。


なぜか、ご機嫌のアナベルとは反対に、どこか浮かない顔をしており、
アナベルは嬉しそうに頷いた後、それに気付いた。





 「うん、ドラコ先輩が禁じられた森に連れて行ってくれるって約束してくれてて。
…ねえ、ジニー、どうかした?なんだか、落ち込んでるみたい。」





動物の感情には敏く、一目見てわかるのだが、
常々アナベルは人間の場合、動物たちに比べて複雑すぎると思っていた。


おまけに、ドラコと会えるせいで浮かれていて今気付いたが、
そういえば、朝からずっと…いや、昨日からだろうか、元気がなかったように思える。





 「いや、うーん…。」


 「動物の事以外だと、私ちょっと頼りないけど、話くらい聞けるわよ。ね?」





言葉を濁すジニーに、アナベルはそう言って、そろりと友人の顔を窺う。


無理に聞きだすつもりはないが、悩み事なら大抵、人に話した方が、
解決できなくてもいくらかすっきりするし、気持ちも落ち着くのではないだろうか。


本当に嫌そうなら、畳みかけないよう、顔色をなんとか読みつつ、
アナベルが申し出れば、ジニーは迷いながらも頷いた。
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