番外編話し集@

□嫉妬日和のある日
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ホグワーツの新入生というのは、新しい生活に胸を膨らませているが、
同時に覚えることが山積みで、新しい生活に慣れるのは一苦労である。


これがマグルの子だったなら、
寮生活と魔法使いの生活の両方に慣れなければいけないのだから、尚更大変だろう。

その点、自分はマシな方だ…とアナベル・ポッターはわかっていた。

が、他の人にはない耐えるべき点も、自分にはある。





 「ベル、大丈夫かい?疲れてない?」


 「大丈夫よ、お兄ちゃん。」





父親ほどではないものの、それでも十分心配性の兄、ハリーに不安げに顔を覗き込まれて、
ぼんやり窓の外を眺めていたアナベルは、はっと我に返った。

最近、気づくとついつい窓の外に目が行ってしまう。

兄に答えた通り、疲れているわけではない。





 (禁断症状みたいなものかも。)





ニコッと笑ってハリーを安心させつつ、アナベルは内心でため息をついた。

ホームシックというわけでもない。

単に、動物たちとの触れ合いが足りないのだ。

ゴドリック谷の家で、毎日動物の怪我を癒し、一緒に遊んで触れ合っていた時と比べ、
入学したばかりのこのホグワーツでは、生徒たちがペットとして連れてきている猫や梟しか動物がいない。

あとは、ハリーたちの話に出てくるハグリットという人が犬を飼っているらしいが、
アナベルは、まだ会ったことがない。





 (でも、勉強は楽しいし、優しい先輩はできたし、我慢しなきゃ。)





先日、嫌われていると思っていた先輩と仲良くしてもらえるようになり、
それがアナベルのホグワーツ入学以来、最高に嬉しい出来事だった。

動物不足くらい、我慢しなくては。

それに、これで正直に動物との触れ合いが足りないなんて口に出したら、
兄は城中の猫と梟を誘拐して、アナベルの部屋に連れてくるのは間違いない。


過保護な兄を過剰反応させまいと、
アナベルは内心の思いを飲み込んだまま、昼食を終えて、早々に大広間を離れた。

気を紛らわせるには図書室が一番だ。

それに、あの先輩に会えるかも…と思ったところで、
図書室へ続く会の階段を上っていたアナベルの肩に、後ろからぽんと手が置かれた。





 「やあ、ポッター妹。」


 「先輩!」





にやっとわざと意地悪な呼び方をしてくるのは、
間違いなくアナベルが図書室で会えるのを期待していたスリザリンの先輩、ドラコ・マルフォイだった。

本日も深緑と銀のネクタイをきちんと締め、涼しげな顔をして笑っている。
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