木初高校男子バレー部!2

□君からの手紙
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そっか。


もう二度と、会うことはできないんだね?




だったらいっそ……




なんて、思っちゃう俺は




臆病で、弱い存在だ。






「日比谷さーん、日比谷涼太さーん」


『はいッス!』




元気よく返事をすると、看護士さん苦笑いで「しーっ」って注意された。


ここは病院。小さい頃から通ってるけっこう大きいとこ。


俺は「ごめんなさいっ」って言って診察室に向かう。




そういえば、ここに来るのは半年ぶりだ。


本当はもう二度と来たくないと思っていた。




ここには、歩人ちゃんとの思い出がありすぎるから。




歩人ちゃんと出会ったのも、一緒に遊んだのもここだった。


もちろん、お別れしたのも。




ひとつひとつ、鮮明に思い出せる。


だから、辛い。




そんな場所に来ようと思ったのは、気紛れだった。




正直、病気が治ろうが進行しようがどうでもいい。


どっちにしても、いつかは……




「あ!涼太!!」


『えっ……あ、森?』




振り返ると、歩人ちゃんの妹の森がいた。




びっくりした。声を聞いた瞬間、歩人ちゃんかと思った。


それに、彼女が病院にくるのは歩人ちゃんのお見舞いの時だけ。




「よかったぁ!涼太いて!」


『?俺に用事ッスか?』


「うん!渡したいものがあって」


『?』




渡したいもの……?




このあと再度名前を呼ばれてしまったため、俺の診察が終わるまで待っててもらうことになった。


診察よりも、そっちの方が気になるんだけど……




長い診察が終わって、急いで森のとこに行く。


森は、中庭のベンチに座っていた。




『っ……森』


「!涼太、大丈夫?」


『はい、問題なしッス』




このベンチは、歩人ちゃんと一番一緒にいた場所。


頭の中がぐるぐるしてきて……


彼女の笑顔がよぎっては、消えていく




『っ……森、場所変えっ』


「……涼太、はい」


『えっ』




俺の話を遮って差し出されたのは、手紙。




『これ……』


「お姉ちゃんから、涼太へ」


『!でも歩人ちゃんって……』


「私が書いたの。でも、言葉はお姉ちゃんのものだよ?」


『!……』




俺は手紙を受け取り、ベンチに座って読み始めた。


森は「渡せて良かった」と言ってその場からいなくなった。




手紙には、ありきたりな言葉がたくさん並べられていた。


俺と歩人ちゃんの思い出、どれだけ救われたか、希望だった、……


ありきたりな言葉なのに、全部新鮮に思えて……




愛しい




〈あんまりワガママ言って、先生を困らせちゃダメだよ?〉




俺はワガママなんて言わないよ。




〈あと、検診サボるのもダメだからね?〉




……ごめんなさい。




〈私がいなくなっても、涼太は大丈夫〉




そんなこと、ない




〈優しい涼太は、絶対に優しい人達と出会えるよ〉




俺は優しくなんてないよ。




〈もっといっぱい言いたいことあったんだけど、長くなっちゃうから最後にしようかな〉




最後、なんて言わないでよ……




〈私ずっと考えてたんだ。涼太のこと。それで、やっとわかったんだ〉




……俺も、わかった




〈愛してる〉
愛してる




〈って、重いかな?(笑)〉
って、重いかな?(笑)




〈でも、本心だから。……それじゃあ涼太、ばいばい〉




『歩人ちゃ……っ!!』




封筒に入っていたもうひとつの紙を見て、俺は驚いた。




それまでの字とは違う、大きく、崩れた感じで書かれた読みにくい文字。




それは……歩人ちゃんが自分で書いた文字だった。




書かれていた内容は




〈涼太が、幸せに生きることを願っています〉




『っ……歩人ちゃん、ありがとう』




俺はしばらくベンチに座って空を見ていた。


特に何を考えるわけでもなく、座っているだけ。


空はほんのりと暗くなっていた。




『……』




今日、病院に来て良かったのかもしれない。


静かに立ち上がり、前を見る。




君が願っていてくれるなら、ちゃんと生きてみようか。


声が聞けなくても、姿が見えなくても




君からもらった"言葉"がある。




それだけで、少しは強くなれるかな?







君からの手紙




今も時々読み返して、いつも勇気をもらってる。






途中でわからなくなったお
迷走なぅ

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