木初高校男子バレー部!3

□暗い道の先
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―――――苦しい……


なんか、寒いな……


ここは、どこだろう……


誰かの声が聞こえる……


必死で誰かの名前を読んでる……




誰の名前?―――――




「涼太!!」


『……よ、ちゃ……さん……?』


「よかった……目、覚めたか……」




いつの間にか、さっきの苦しさはなくなっていた。


寒さも、ない。


ここはいつもの病室。


洋ちゃんさんが、俺の名前を呼んでたんだ。


危ない。また見失うとこだった。




『洋ちゃんさん、すっごく疲れてるッスね?』


「涼太が夜通しうなされて……つーかさっきまでうなされてた」


『えっ……』




俺、なんで……


あぁ、確かアニスっていう姫ちゃん先輩の知り合いに追いかけられて……


そのまま、意識を手放したんだっけ……




『ごめんなさいッス……』


「謝らなくていいよ。主治医なんだから、当然だろ?」




洋ちゃんさんは笑ってるけど、疲れは隠しきれてない。


また負担、かけちゃった……




『あの……』


「なあ、涼太。大阪行きのことなんだけど……」


『!』




そう、俺は持病が原因で生まれ育ったここを離れなければいけない。


ここじゃ、設備が整ってないから。




「お前の体調が回復するまで待つよ。だから、少し延期な?」


『!は、はいッス!!』




正直、ホッとした。


まだ、もう少しだけここにいたいから。


もう少しだけ、側にいたい人が出来たから。


側にいたい人……




『あ、あれ……?』


「涼太?どうした?」


『……ニコッ なんでもないッス!』


「そ、そうか?」




洋ちゃんさんは、「もう少し寝た方がいい」と言って俺の頭を撫でた。


俺は素直に従う。


布団に入り、目を閉じる。


洋ちゃんさんの足音が遠ざかるのを確認して、体を起こした。




俺はさっき、誰のことを考えたんだ?


俺には今彼女がいて、大好きなハズなのに……




側にいたいと思ったとき、真っ先に浮かんだのは別の人だった。




『っ……』




そうか、ここを離れるってことは……


あの子との想い出と離れることになるのか……




―――――気が付くと、また暗闇にいて


鮮明に、思い出していく……




苦しいのは、生きてるから




寒いのは、君がいないから




ここがどこかわからなくなるのは、君の隣以外の居場所を俺は知らないから




呼んでいる声は、聞き慣れたその声は、俺のもの




そして、俺が呼んでいるのは……




大好きだった、君の名前。




いくら立ち直ったフリをしてても、無意識の中では残酷なほど求めてる。




こんな俺に、愛したり愛されたりする資格なんてないだろ?






暗い道の先




いつまで経ってもたどり着けないそこに、答えがあるような気がする。





end...

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