木初高校男子バレー部!6
□好きだと言えないままで
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今年は少しだけ、桜の開花が遅かった。
毎日ハラハラしてたけど、本日無事に満開を迎えた。
間に合うて良かった……先輩達の卒業の日に。
「ヤッヂぜんばぁあい!!ほんばにいっぢゃヴんでずがぁぁあ!!」
「ちょ、何言うてるかわからんわ(笑)」
「昴先輩、東京でも無理したらあきまへんよ?」
「……大丈夫や」
「たまポンさんホンマ残らへん?今なら間に合うで!」
「なんでやねん!!みんなと一緒に卒業さしてや(笑)」
いつも通り騒がしいみんなに囲まれていると、寂しいって気持ちが和らぐ。
……だから少し怖い。
みんなと別れたあと、1人になった時、その倍寂しくなっちゃうんやないかて。
いつも明るくチームを引っ張ってくれたヤッチ先輩。
最後の大会は足怪我して出られへんくて、めっちゃ悔しかったなぁ……
でも、誰も負けへんくらい大きい声で応援してはって、最後までみんなの士気を保ってくれはった。
ヤッチ先輩と正反対で、冷静にチームをまとめてた昴先輩。
先輩の父親が「転校させる」言うた時はホンマびっくりしたなぁ……
このチームで物足りなくないんか思たこともあったから、最後まで仲間でいてくれたこと、めちゃくちゃ嬉しかった。
そして……
「カントク!みんなで写真撮ろて!」
『!たまポンさん……』
「ん?って何泣いとんねん!!これから写真撮る言うてるのに!!」
『だ、だって……』
「あーあー、折角の可愛い顔が台無しやん。カントクは笑ってた方がええわぁ」
『すみません……』
誰よりも仲間が好きなたまポンさん。
優しくて、みんなたまポンさんを信頼してて……
ヤッチ先輩と一緒にバカやったり、
昴先輩をちゃんと輪に巻き込もうとしたり、
留先輩のワガママにも付き合ったり、
礼先輩がどうしようもないことした時にちゃんと叱ったり、
セオ先輩のこと気を使ったり
青の質問にちゃんと答えてあげたり、
瀧にバレーを基礎から教えてあげたり、
それから……
「ニコッ カントク、笑ってや」
『……たまポンさん』
「最後は泣き顔より笑顔が見たいんや!カントクの笑顔なんて贅沢やけど、頼むわァ!」
『……ふふっ(笑)そう、ですよね。笑顔が良いですよね!ホンマ贅沢なんやから!』
「お(笑)言うたなぁ!!」
数え切れない程の思い出と
大好きだと思う気持ち。
このまま、最後の最後まで言えないんだろうな……私は。
「ほな行こか!」
『はい!』
また、どこかで偶然出会えた時に
きっと言えるようになるだろう。
だから今はまだ
好きだと言えないままで
アナタの背中を、送り出す。
(あ、そうだ……卒業おめでとうございます!!)
いつか書きたいなぁと思っていた話。
時期外れだけど(笑)