アシタのセカイ

□トビラのムコウ
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浅弓 慧介(あさゆみけいすけ)。


資産家の一人息子として生まれたオイラは、浅弓家の恥とならないように幼い頃から英才教育を受けてきた。


きっとそれは金持ちの跡継ぎならフツウのことなんだろう。


でも、オイラには合わなかった。


そのせいか、過度なストレスがかかったようで……




心が壊れた。




「けーくん、おはよぉ!」


『……』


「今日の夕食はね、けーくんのだぁいすきなシチューだよ!」


『……』


「……ニコッ 出来たら呼ぶから」


『……』




母親が優しく接してきても、オイラは反応すら返せない。


どういう反応が正しいのか。どういう言葉が正しいのか。


もうわからなくなっていた。


オイラがそうなってから、父親は余計イライラして母親にキツく当たった。


母親は毎日のように泣いていた。


それを見ても、オイラは何も思わなかった。




――――――――――





事実上家族が崩壊してから数年が経った。


オイラの心はいっこうに壊れたまま、元に戻る兆しはない。


仕方ないと言うと、父親がオイラの腕を無理矢理引っ張った。


別に嫌がることはしなかったが、なんとなく「捨てられるのかな」っと思った。


でも、連れてこられたのは




『……』


「お前は今日からここで世話になるんだ」




目の前にあったのは、水族館。


そういえば、一度も来たことないな。つーか、遊びに事態つれてってもらったことねーけど。




「あっ!兄さん!」


「……兄さんと呼ぶな。お前はもう勘当されてるんだから、俺は兄ではない」


『!……』




俺達の前に現れたのは、作業着を着た綺麗な女の人。


その人の後ろに、オイラと同い年くらいの男の子がいた。




「(笑)で、私に何か用?」


「用がなければ来ない」




2人が会話をしている間に、後ろにいた男の子が近付いて来た。




「は、はじめまして!俺、寳明日っていいます!君は?」


『……』




"明日"は何も反応を返さない俺を見て、少し戸惑っていたが




「俺ね、ここの水族館の手伝いよくするんだよ!ほら、案内してあげる!」




ギュッ




『!』




俺の手を握って引っ張っていく"明日"。


でも、父親の感じと全然違う。




温かさを感じた。


この感じは……




「ニコッ ようこそ、寳アクアパークへ♪」







トビラのムコウ




そこに、オイラが見たのは……





(彼が開けてくれなかったら、オイラは壊れたまま過ごしていた)
(今でも父親とは喧嘩したりするけど、だいぶ落ち着いた)
(……"明日"を教えてくれて、ありがとう)




……はい(笑)さーせん\(^o^)/

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