木初高校男子バレー部!2
□不良
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「誰よりも喧嘩が強くて、女をとっかえひっかえ……」
ある人の話をしてるとき、友達が言った言葉。
その言葉を聞いたとき、私は別の人のことを思い出していた。
それは、私のお兄ちゃん。
千鶴くんじゃなくて、和彦くんの方。
昔から何事にも冷めていた和彦くんは、女の子達から"大人っぽい"とか"クール"とか言われて、人気があった。
当然、言い寄ってくる人も少なくない。
断るのも面倒だったのか、和彦くんはいろんな女の子と遊んでた。
つまり、女をとっかえひっかえしていた。
それを面白くないと思っている人は大勢いたみたいで……
『っ!和彦くん!その怪我どうしたの?!』
「え?うーん、どうしたんでしょうね?」
『っ……早く手当てっ』
「ほっといていいですよー」
よく、怪我をして帰ってきた。
千鶴くんに聞いたら
「カズは強いから大丈夫だよー」
って。
和彦くんは、みんなが言う"最低な不良"のイメージに当てはまる。
だから、みんながあの人の話をしてるとき、どうしても悲しくなる。
違うんだよって、言いたくなる。
和彦くんも、あの人も
誤解されやすいだけなんだよって。
和彦くんの場合、ずっと千鶴くんが側にいた。
だから、誤解はそれほど広がらなかった。
でも、あの人は?
私があの人に会うときは、いつも一人でいるような気がする。
誰か、側にいてくれる人はいないのかな?
こんなに気になるのは、あの人が昔の和彦くんと同じ境遇にいるから?それとも……
不良
みんながそう思ってても、私にとっては違う。
だから、もしあの人が一人なら私が側にいてあげたい。
(なんて、勝手だよね)
(実際は少し強く言われただけで立てなくなるくらい震えてる)
(……なんて臆病なんだろう)
……はい。頑張ります。