木初高校男子バレー部!2

□俺の選択
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俺は、自分中心の世界に住んでいた。


そのことは重々承知してたし、他の奴等もそれでいいと言っていた。


それが変わったのは17歳のときだった。




『(なーんで俺がこんなこと……バレーしてーのに……)』


「うぅ……ひっく……」




隣で泣きじゃくる妹(梓・6歳)の手をひいて歩く。


正直、うんざりだ。


本当に、何故俺でなければならないのか。


さっき親から連絡があって、妹を病院に連れていけと言われた。


「お前らが連れてけ。俺は部活だ」と断ったら、怒鳴られた。


その後散々言われ、仕方なく承諾。俺ってば優しいな。


そんなに具合悪いのかと思ったが、そうじゃない。


転んで頭を打った。いつものこと。




『……いい加減泣き止めよ鬱陶しい。だいたいうぜぇんだよ転んだくらいで。俺の貴重な時間を……』


「うぅ……ご、ごめんなさっ……」




思いっきり睨むと、妹はうつ向いた。


俺の貴重な時間を無駄にしやがって。


兄貴なら普通そういうこと言わないよな。


そう、俺は普通の兄貴じゃない。


将来超有望視されてる。所謂エリート。超エリート。


勉強面じゃない。勉強はできない。いや、やろうとしたことないけど。


俺が優れてるのはバレー。


卒業までまだあるが、もうすでにいろんな企業から声がかかっている。


学生代表の試合にも出たし、いろいろ経験した。


その俺が、将来バレーボール界のスーパースターのこの俺が、たかが妹ごときのためにバレーを休むなんて。ふざけてる。


そんなことを考えてると(声に出てたのかも)、病院が見えてきた。


妹は怖いのか、俺の手をしっかり握ってきた。




『おい、もういいだろ。放せ』


「……」


『イラッ 聞いてんのか?おい』




妹が手を放したのと同時に、今まで合わせていた歩幅を自分のペースに戻す。


病院の中に入る。用事なんてさっさと済ませて、部活に戻る。




『すみません。先程電話した高橋ですけど……』


「はい、高橋さ……!////」


『ニコッ (そういうのいいからさっさとしてくれよ)』


「えっと……今日は梓さんの診察ですよね?////」


『はい』


「その、梓さんは……?」


『は?ここに……』




いない?あれ?さっきまで俺の後をついてきてたよな?




『チッ 余計な時間とらせやがって』


「えっ」




一度病院から出る。すると、妹は地面に座っていた。


こいつ、またコケたのか……


側に行って無理矢理立たせる。




「っ!ありが『さっさとしろよ。何回も言わせんじゃねぇ』……ごめんなさい」




本当に、何故俺が……




診察が終わって結果待ちの間、俺はひたすらイメトレをしてた。


妹は俺の邪魔をしないように静かに過ごす。




「……高橋さん、2番にお入りください」


『……』




俺は無言で立ち上がり、妹はそれに続いた。




どうせたいしたことはないんだろ?


結果を聞いたら、俺は真っ直ぐ部活に行く。親からは「病院に連れていけ」としか言われてないからな。診断結果を聞いてやるだけ優しい方だろ。


しかし、俺の予想は大幅に違っていた。




『……はい?えっと、あの……』


「簡単に言いますと、妹さんは三半規管の病気で……」




病気?コイツが?何言ってんだ?




「そのせいで今回みたいに転ぶことが多いと……」




コイツが転ぶのはどんくさいだけだろ?




「……高橋さん?」


『ハッ ご、ごめんなさい。えっと、それ治るんですか?』


「残念ですが、今のところは……でも、直接的には命に関わることではないので……」


『っ……』




妹を見る。事の重大さがわかってない。きょとんとして俺と医師を交互に見てた。




帰り道。さすがに動揺した俺は、妹の手を握り、ちゃんと転ばないように気を付けて歩く。




『……なぁ、なんか食いたいものある?』


「え……?ど、どうしたの……?」


『気紛れだよ気紛れ』




なんか恥ずかしくなって、視線を反らす。




「ふふっ……ようへいくん、ありがとう」


『!』




あ……なんか……




「……プリンたべたいっ!」




コイツのこんな笑顔、初めて見た。


天使みたいで、可愛いかも。


嬉しそうに手を握るコイツ。今度はしっかり握り返す。




『……』




俺は今まで自分のためだけに生きてきた。


でも今は、「病気のコイツのためにできること何かあるかな」とか考えてる。




卒業まであと一年ちょっとある。


まだ考え直す余裕あるよな?






俺の選択




後悔のないように、もう一度やり直してみるか。




(マイエンジェル梓ぁあvVただいまっ☆そうかそうか、寂しかったか!お兄ちゃんの腕に飛び込んでおいでーっ!)
(……え、えんりょするよι )
(もー!つれない梓も可愛いなぁvV)
((洋平くんがバカになった……))




てへぺろっ(笑)

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