木初高校男子バレー部!2

□少しでも
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俺には好きな人がいる。


最初はそうでもなかったんだけど、一緒にいるうちに段々恋愛感情が芽生えた。


でも、それと同時にすごく苦しかった。


その子が、他の奴を好きだって嫌ってくらい思い知ったから。


そして、その子も片想いだってことも。


だからって訳じゃないけど、俺は想いを伝えないと決めた。


片想いってだけで苦しいのに、他の奴を思いやるのって正直きついと思う。




「お前は本当にそれでいいのか?(笑)」


『……いいって言ってるじゃないですか。何回も何回もしつこいですよさささん』


「だってお前納得してるように見えないんだもん(笑)」




俺の前に座る、すべてお見通しだと言いたそうな顔をしてるのは遊馬小咲さん。


……俺の好きな人、遊馬鶩のお兄さん。


家に遊びに行った(友達には内緒)ときに知り合って、バレた。


俺は顔に出るようなタイプじゃないはずなのに、やっぱり人生経験の差だろうか?


それ以来、思いっきりおもちゃにされてる気がする。




『……せめて、相手が修じゃなきゃ良かったんですけどね』




鶩ちゃんの好きな人は松田修介。そのことはたぶん修本人以外知ってると思う。




「ふーん……修介以外だったら奪ってたって?(笑)」


『違います。修以外だったら綺麗さっぱり諦めてました』




さささんは「へぇ〜」と面白そうに先を促した。


カッコ悪いから言いたくなかったけど、どうもこの人には隠し事なんてできない。




『……正直、修が鶩ちゃんを異性としてみる確率って低いと思う。今も家族くらい近くの距離感だし』




それに……




「それに、お前の気持ちを修に言っちまえば修は応援してくれるってか?(笑)」


『!』




その通り。俺が知る限り修はお人好しで、何より優しい奴だ。


万が一修が鶩ちゃんを好きになっても、俺の気持ちを考えて身を引くだろう。


こんなことまで考え付き、いざとなったらアリかもなんて思ってる俺は、とことんカッコ悪い。




「……まあ、お前の考えてる通りだよ。俺は鶩と同じくらい長く修介も見てきたからな(笑)」




そう言って笑うさささんは、本当はどう考えてるんだろう。


この人は、本当に読めない。




「なぁ、このままだとお前後悔するぜ?どうせなら、フラれてスッキリしちゃおう!」


『嫌です』


「えー、意気地がなーい(笑)」


『そうですね』




今言っても結果は手に取るようにわかる。


せめて、鶩ちゃんが修に気持ちを伝えた後。


それじゃあフラれて傷付いてる彼女に付け入ってるみたいだって?




違う、むしろその逆。




きっと、鶩ちゃんはフラれても修が好きだよ。


修が他の子と付き合って、幸せになる。


たぶんそれまではフラれても嫌われても修が一番なんだと思う。


だから、想いを伝えても結局断られる。


それならいつ言っても同じかもしれないけど、そこは気持ちの差ってことで。




……なーんて、自分の立場を分析してみたりして。


本当は、ほんの数パーセントでも高い確率のときにっていう打算。




「ま、応援してあげるよ(笑)」


『……さささんはみんなを応援しそうですよね』


「そんなことな……いや、あるかも(笑)」


『あるんですか』




ニコッと笑うさささん。


適当な人だけど、話してると気が楽になるな。




『じゃあ、俺そろそろ行きます』


「げっ!もうそんな時間?!うわー今日食事当番だったのに!あ、渚くん作りに来ない?鶩と一緒に晩御飯食べれるよー(笑)」




本当にこの人は……




『いいですよ』


「マジ?!助かる!!」






少しでも




可能性があるのなら、俺はそれをフルに使う。


そういう風に誘導してるのは、さささんなんだよな。




(鶩おかえり!)
(ただいまーって、渚くんもいるの?)
(……お邪魔してます)
(夕飯作るの手伝ってもらってた(笑))
(え、ありがとう!あ、そうだ!修も呼ぼっか♪)
(……)
(ぷっ(笑))




……何の話だっけ?(笑)

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