木初高校男子バレー部!4

□あなたの笑顔
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13歳の夏の終わり、撮影のために初めて沖縄に来た。


海が綺麗で、植物とか大きくて、そして……何より暑かった。


バテる人も出てきて、夕方終了予定の撮影は、結局夜まで続いた。




『お疲れ様でしたー!』


「藤亜、お疲れ様」


『!母さん、ありがと!』




私のマネージャーでもある母さんから飲み物を受け取る。


すごく喉が渇いてたからすぐ飲み干した。




「あら……もう飲んじゃったの?(笑)」


『うん!あ、母さん先に戻ってて?俺ちょっと買って来る!』


「Σえ?!」


『大丈夫大丈夫、すぐそこの自販機だよ!』




心配そうな母さんを他所に公園に入る。


さすが夜。誰もいない。


少し不気味だなって思いながら飲み物を買う。


そして戻ろうとしたときに、ベンチに人が座ってることに気が付いた。


具合悪いのかな?っと思って近付く。




『大丈夫?』


「!」




声をかけると、その人は顔をあげた。


すっごく可愛い女の子だった。


同い年くらいかな。


泣いてるようで、目が潤んでる。




『Σだ、大丈夫か?!これ使って!』


「!ありがとう……」




ハンカチを手渡す。


彼女は受け取ってハンカチをきゅっと握り締めた。




怪我はなさそうだし、よっぽど辛いことがあったのかな?




しばらくその場で様子を伺ってると、彼女は短く息を吐いた。




「もう大丈夫!ありがとね?」


『いえいえ!つーかこんな遅くに1人で泣いてるの危ないぜ?可愛いんだからさ!(笑)』


「え?!いやいやι ……君こそ危ないよ?」


『俺は大丈夫』




よかった。


もう泣いてないみたい。




「あ!俺ーーーーって言うんだ!君は?」


『俺は……』


「ちょっと!何してるの?!」


『!』




名前を言おうとしたところで母さんが迎えに来た。


もう少し話したかったけど、タイムリミットだ。




『今行く!じゃあね、ーー』


「!あ、ハンカチ……」


『あげるよ!』




笑顔で手を振って、母さんの元へ走る。




「あんまり心配かけないでちょうだい。貴女は普通じゃないんだから」


『うん、ごめんね?』




帰りながらも、彼女のことを思い浮かべる。


また泣いてたら嫌だな。




『……っ』




大丈夫、だよね?


今日はたまたま1人で泣いてただけだよね?


明日にはきっと友達や仲間に囲まれて笑ってるよね?


こんなに気になってしまうのは、泣いてるあの子が昔の自分と重なるから。


私は周りの人に支えられてきた。


私も誰かの力になりたいって思うから






あなたの笑顔




それを願って、今日もまた笑う。




(……はい、オッケー!!)
(藤亜、今の表情いいわね)
(本当?!よかったーっ!)




あの時の藤亜ちゃんサイドの話。
女の子だと思ってたの。
“ヒメカワアイコ”だと思ってたの。

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