青嵐吹くときに君は微笑む

□第3章 職人の街と渚のお仕事
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「あの、俺、相原零って言います」
「相原君ね。酒本君からよく聞いているよ。俺は桜井有希(さくらい ゆき)、ここカフェ『if』のマスターをしています」
 少しひんやりとした爽やかな笑顔に不思議な印象を受ける。深い蒼の瞳に心の奥まで見透かされているようだ。
「君、こういうところが初めてで緊張しているようだね」
「す、すみません」
 条件反射のように謝ってしまった。
「大丈夫、俺はその辺のジジイやガキ共よりは幾分まともな頭をしているから」
 接客業らしからぬ口ぶりに、案外この人はお茶目な人なんだと思った。
「それに、相原君には随分感謝しているよ。最近酒本君が元気なのは君のおかげだ」
 渚先輩はいつも元気だった。俺は出会う前の渚先輩を知らない。

「マスター何話しているんですか?」
 奥から出てきた渚先輩に、俺は思わず見惚れてしまった。
 真っ白なシャツに黒いスラックス、紺色のカフェエプロンをした渚先輩はいつもと違う雰囲気を醸し出している。一言で言うと、カッコいい。
「ちょっと自己紹介をね。大丈夫、取ったりはしないよ」
 有希さんの笑みはなんだか色っぽい。
「ちょっ、えっ、有希さん!?」
「マ、マスター!!」
 きっと二人揃って顔が真っ赤だろう。
「あははははっ、二人とも熱いね。相原君、ゆっくりしていくといいよ」
 有希さんは笑いながらカウンターの奥に入っていった。
「有希さんっていろんな意味ですごい」
「マスターはマスターだからね」
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