言葉の欠片はあなたと共に

□第4章 消えゆく思い
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俺が起きるとすでに昼近かった。歩はすでに部活で居なかった。
冷たいシャワーを浴び、目を覚ます。
上半身裸のままソファーに腰掛け、はぁ、とため息をついた。
何もする気が起きなかった。考えるのも、息をするのも。

希と仁。俺の恋人は仁だ。仁は俺のことを好きなんだ。俺だって仁のこと好きだ。
じゃあなぜ迷う。分からない。
 
心の中をいっそ洗い流せられればいいのに。そしたら何も迷わない。
この世に人間が二人しかいなければいいのに。そしたら何も悩まない。

ぼんやりと考えていると、ふいに携帯が鳴った。
『丹鳥仁』と画面に表示されている。
跳ねそうな心臓を抑え、電話に出た。

「もしもしかな兄? 久しぶり」
声のトーンがなんだか低い。
「久しぶり、元気だったか?」
「うん、まあね」
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