キミに逢いたい
□第3章 藻掻き続ける者
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莉那はその後、鼻歌混じりで寮に帰宅した。
部屋の電気をつけ、カバンを椅子に置く。
今日は希咲と親しくなれた。
あんなに強い能力者に出会えたことが嬉しい。
拓磨も確かにサークルランクの持ち主だが、希咲は特別だ。
禍々しい何かを持っている。
模擬戦の中で絶対的な強さを感じた。
ふと、莉那から笑顔が消えた。
肩が震える。涙が込み上げてくる。
悔しくない訳がなかった。
敗北など、莉那のプライドが許さなかった。
敗者など生きる価値も無いと自分に言い聞かせて生きてきた。
明るく笑うことにも慣れたが、敗北には慣れなかった。
窓ガラスが音を立てて割れる。照明も割れる。
「……うあああああああああああああっ」
莉那は絶叫した。
髪を掻きむしり、目を覆った。
散り散りになったガラスの破片が莉那の服を、髪を、体を切り裂く。
流れる青い血が憎くて堪らなかった。
あぁ、なんと呪われた血だろう。
青紫の液体が制服を染める。
血の匂いが充満したこの部屋で、莉那は己の想いを認識させられた。