キミに逢いたい
□第4章 幻想をもたらす者
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目の前に《ジャンパー》がいる。
そこは天と地が入り乱れる世界で、曇天から射す鈍い光が《ジャンパー》の紅いグロスをぬらぬらと光らせていた。
「ねぇ拓磨、貴方はだぁれ」
「僕は拓磨だよ」
「じゃあ私はだぁれ」
「君は僕だよ」
「そう、私も拓磨」
黒色のワンピースをふわりと揺らし、豊かなフリルをあしらった袖から白い腕を《ジャンパー》は伸ばした。
その細い指は僕の指を絡めとり、そして薔薇の蔓となって手首、腕へと絡み付く。棘があちこちに刺さり青い液体が線をつくって流れた。
「ねぇ拓磨、私と一緒に死にましょう」
紅い唇が耳に近付き、《ジャンパー》はもう一度囁いた。
「私と死んでこの世から解放されましょう」
「生きることは苦痛なの。早く殺してあげましょう」
拓磨は納得してしまう。
僕は生きることを拒んでいる。
そして人を殺すとき、その人を救ったつもりになるのだと。
それは何度も繰り返された悪夢であった。