言葉の欠片はあなたと共に

□第2章 入学と試練
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寮は2人1部屋だ。部屋には簡単なキッチンとダイニングとユニットバス、そして個室にはベッドと机、やや小さめのクローゼットがある。
ルームメイトになったのは。
「香登 歩(かがと あゆむ)です。煩くならないよう気をつけますので、よろしくお願いします!」
明らかに煩そうなアホ面だ。それでも黒い瞳がどことなく仁に似ている。ふと仁の顔が浮かんだ。
それを振り払おうとギュッと目を閉じる。目を開けるとそこには首をかしげた青年が立っていた。

「白崎 要、よろしく」
ぶっきらぼうに答えると歩はきょとんとして、それからクスッと笑った。

「要さんって、可愛いですね」
「なっ???」
いきなりそんなこと言われる筋合い無い。

「だって、綺麗な顔して表情がころころ変わるんだもん。もっとクールな人だと思ったよ」
「はぁ、君ってアホでしょ」
「よく言われます」
こっちは呆れて物も言えないというのに、開き直って笑っている。
正直扱いにくい。

こんな奴と一年間ルームメイトだと思うと気が滅入るが、鈍感そうな奴で助かったとも思う。
気楽に過ごすことができそうだ。無駄に仁への想いを悟られないように気を張らなくてもよさそうだ。
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