81マスの日常

□第1章 拉致と恐喝は犯罪です
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春の麗らかな陽気に包まれた体育館。今にも睡魔に負けそう。
実際、俺の後ろの方から寝息が聞こえてくる。

入学早々の身体測定でクラス一背の低い男子という事実が、薄々気付いてはいたものの発覚した俺は、体育館の最前列で新入部員獲得に燃える先輩方 の部活動紹介をなんとか寝ないように見ている。

最前列で見られることは利点であるように聞こえるかもしれないが、なってみるといいことなどひとつとない。
運動部の実演でボールが飛んでくる恐怖に耐え、 失礼にならないよう必死で眠気と闘い、そして、このように先輩に絡まれるのだ。

「君、将棋は知っているかい?」
「はあ、あまり知りません」
「でも安心してくれたまえ、我が将棋部は初心者大歓迎だよ!」
「……はい」
背が低いってどうしてこんなに不便なんだ。両親を少し恨むぞ。

なんとかやりすごしてまた眠気との闘いを始めようとしたその時のこと。
「と、いうことで君、入部決定だからねっ」
「…………はい?」
やっぱり両親に八つ当たりしても許されるだろうか。
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