短編集

□本当のキモチ
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「だから鬱陶しいって言ってんだろ」
陽祐(ようすけ)は声を荒げた。
学校の屋上、昼休み。
弁当を作ってきたという優斗(ゆうと)に、陽祐はなぜだか腹をたてていた。
「ごめん……でも陽祐に俺の作った弁当、食べてほしくて……」
優斗がうるうるとした目で見つめるものだから、陽祐はますます不機嫌になる。
「そういうのいらねーって言ってんだろ、もうこれ以上関わってくんな」
うん、ごめんなさい、と子犬のように優斗はしゅんとして屋上を立ち去った。

「あーくそ、イライラするなぁ」
優斗を自分が追い払ったのに、なぜ寂しく思うのか分からないことに陽祐はイライラしていた。
「俺はあいつのこと、どう思ってんだろ」
陽祐は考えようとしたけど、すぐに否定した。
こんなの恥ずかしいから。
忘れよう。忘れてしまえば何も考えなくていい。
陽祐は心に蓋をした。

また別の日。
陽祐はいつものように登校して、教科書を机の中に仕舞おうとすると、何かが引っ掛かって入らなかった。
中に手を突っ込んで確認すると、それは優斗が作ったと思われる弁当だった。
「んだよ……おい優斗、どういうことだ」
席に小さく座っていた優斗はビクッとしてこちらを振り返った。
「あっ……えっと……その…………」
優斗は陽祐に怯えながらも、何か言いたげに口を動かす。
「その……陽祐、昨日昼ごはん食べなかったよね。授業中、お腹なってたし。本当は作ってくるの……待ってたんじゃない?」
「なっ……!ちょっとこっちこい」
そう言って陽祐は優斗の手首を掴んで廊下に出た。
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