本棚2

□子鬼 おおぐま座 はしご
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鬼ヶ島に独り住む子鬼が恋をしました。
それは、人間の描いた美しい星図のなかのおおぐまの星座でした。

ある冬の夜、子鬼は小高い丘の上でおおぐま座に呼び掛けました。

「おおぐまさん 北のお空のおおぐまさん ぼくはあなたが好きなんです
お話ししましょう おおぐまさん」


しかし、おおぐま座はなかなか相手にしてくれません。

『小鬼さん 地上の小さな小鬼さん 私を好きだと言うけれど あなたはここまで 来れないわ』


それから、季節が一回り程もしたある晩、小鬼は大きな大きな、長い長いはしごをかついであの丘にやってきて、あの夜と同じように呼び掛けました。

「おおぐまさん おおぐまさん 北のお空のおおぐまさん ぼくはあなたが好きなんです お話ししましょう おおぐまさん」

おおぐま座は、目をつむって言いました。

『小鬼さん 地上の小さな小鬼さん 私を好きだと言うけれど あなたはここまで 来れないわ』

すると小鬼は、にこりと笑って言いました。

「いいえ 行きます あなたのとこまで のぼって行きます」

小鬼ははしごをお星さまに引っかけると、するするとはしごをのぼっていきました。

お月様があくびをしながら眺めています。

小鬼がやっとのことでたどり着くと、おおぐま座は泣きました。

『小鬼さん ほんとに 来るとは 思わなかったわ』


小鬼はおおぐま座の鼻先にキスをして言いました。

「だってあなたが好きなんです お話ししましょう おおぐまさん あなたとお話ししたいんです」

それから毎晩小鬼は、おおぐま座が海と山の向こう側へ帰るまでいろんなことを話しているのでした。

お月様がこっそり祝福しているのは、誰もしりません。

〜Fin〜

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