Long Dream

□1. 0ヶ月
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笑う人もいれば、別れを惜しむ人もいて、

貰ったばかりの額当ては、

思っていたよりも重い気がした

きっとそれは、

一歩だけ、父様たちに近付いた証なのだと

心のどこかで思っているからかもしれなくて……



同期のみんなが泣き笑いながら自分たちの両親と抱き合ったりする中で

私は一人、何を思うでもなくアカデミーを見上げていた

「(・・・・・・忍になった、)」

心の中で呟くと同時に、額当てを持つ手に

少しだけ力が入った気がした。

ゆっくりとアカデミーから視線を外し、

まだ話し込む同期のみんなや、両親と笑顔で手を繋いで今まさに帰ろうとする様子をそっと眺める。

その中には当然、自分が密かに思いを寄せるあの人もいるわけで、

「(・・・いつもと同じ顔、)」

思わず頬が緩んでしまう。

みんな顔には嬉しさを隠せずに居る中で、

一人だけ仏頂面で我冠せずと言った様な表情で空を見上げている。


特に話しをしたことがあるわけでもない、ただこちらが一方的に思いを寄せているだけ。

距離を縮めたいとは、あまり思ったことがなかった。

見ているだけで幸せだったと、こんな単純な言葉で表せるとも思えないけれど。

彼が見ているのと同じ空を見上げる。

これ以上ないほどに綺麗な青空。

瞼を閉じると柔らかな風が頬を撫でた。

瞼を開き、前を見据える。

ゆっくりと歩を進める。

後ろ髪を引かれることはない。

だってずっと背中を押してくれていたのは、

今は亡き両親と、遠目から眺めていたみんなの姿だから、

「・・・頑張ろう、」

小さく呟けば、足取りが軽くなった気がした。



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