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□誰殺がれ
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「おい、黒塚」
耳慣れたその声に、俺は顔を上げる。
真正面に声の主はいた。
「行くぞ」
「あ……うん」
くるりと華麗に身を翻し、俺に背を向け美麗に歩く彼女ーー斑鳩麗子。
名前に麗しいと付いているように、容姿は高2とも思えない程大人びて美しく、そして秀才。家柄も良く、まさしく“完璧”な人間だ。
ただちょっと変わり者で、難しいことを話したりわけのわからない言動をする。
だから麗子と付き合おうという人もおらず、麗子自身も独りを好んでいるので、美人とはいえ周りに人は全く集まらない。
麗子と唯一話しているのは俺だけ。
昔友人に、よくあんな変人と付き合えるな、と言われたことがあるが、俺は気にしたことはない。
むしろ麗子に対して、こんな凡人とよく付き合いきれるよな、と思う。
そんな秀才の話に、凡人がついていけるわけがない。
麗子は俺に何を求めているんだろうか。
長い付き合いだが、未だにわからない。
わからないことが多い。
謎めいた人物だ。
「何をボーッとしている。早く行くぞ」
はっと気がつくと、麗子は教室のドアの側に立っていた。
「あ、ごめん。今行く」
俺、黒塚涼真と斑鳩麗子は幼なじみなのだ。
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