いつも月夜に

□目は口ほどに
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「召使い?」

初耳、と言わんばかりの調子が返ってきてちょっぴり落胆する。テーブルに着く前に覗きに行った厨房でのことをいれてこれで二回目だ。期待はずれ。

「じゃあ、陛下ったらまたワドルディを……」
「大変じゃないか。早くワドルドゥ隊長に相談した方が」
「違うわ。さすがにデデデもこの前の事件で学んだわよ。普通にお世話させてるだけ」

口に入れたばかりのトーストをゆっくり咀嚼していたら話が飛躍していくので慌てて止めた。
パパとママが言っているのは、ワドルディ一斉リストラ事件のこと。デデデがホーリーナイトメア社で買ったお世話ロボットが便利だからと、ワドルディを全員城から追い出した。まあそのお世話ロボットの正体はホーリーナイトメア社が送り込んだ借金取り立て魔獣だったわけだけど。
二人は目をぱちくりさせてほっと息を吐く。

「ならよかった」
「陛下が気にいるんだから優秀ってことよねえ。ママも会ってみたいわ」

のんびり交わされる会話にどうもむずむずして仕方ない。スープを一口飲んでなんとかやり過ごしたけれど、隣に座っていたブンが突然椅子から立ち上がった。

「俺はみた!これが気持ち悪いやつなんだ。足が長くて真っ黒けで、ずーっとにこにこ笑ってんの。声だって機械みたいな変な声で、しかも」
「ブン!!」

テーブルに手をついてフォークを振り回すものだから思わず咎めたけれど、思った以上に声に棘があったみたい。みんなが驚いたような顔をした。

「なんだよ姉ちゃん。そんなに怒らなくたっていいじゃんか」
「べ、別に私は……」

お行儀が悪いから止めただけ、と続けようとして自分でも不思議に思った。
なんで私、あんなに頭にきたのかしら。

「まあまあ。フームは少し気を張りすぎなんだ。陛下の魔獣遊び癖は今に始まったことじゃないし、危険はない。それならなにも心配することないじゃないか」

パパが笑ってそう言うけれど、今回はそうはいかない。


「それがわからないから、悩んでるんじゃない」
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