TMNT

□「またいつか」のメモを添えて
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あれから。小さな女の子との接触はスプリンター先生にばれることなく、特に四人の中で話題に上がることもないまま、数日が過ぎた。

いつものように鍛錬をこなし、これだけは欠かさない刀の手入れの最中。レオナルドにとってなによりも穏やかな時間である。
この後はなにをしようかと考えながらレオナルドは刀を掲げた。そうだ、ミケランジェロに部屋の掃除をするように言わないと。
古い油を拭い取り次の作業に取り掛かろうとした手が、ふと止まる。

『せきがひどくなっちゃうから、お外に行けなくて』

緩慢な動きで、道具に伸ばしていた手が膝の上に戻された。
彼女は今頃、なにをしているだろうか。また父親に内緒で持ち出したカメラを片手に、外を眺めているのだろうか。湧き上がるものはもやもやと気持ちの良いものではない。
もう少しなにかできることがあったんじゃないか。せめて元気が出るような言葉をかけてあげられれば。
気づけば刀の手入れは中断。レオナルドの意識はどこか遠くにあった。それを見計らったかのように、道場の入り口で橙色のマスクが揺れる。

「レーオ」
「!」
「なにぼーっとしてるのさ」
「マイキー」

ミケランジェロに指摘されるとは、とレオナルドは深いため息を吐いていつの間にか刻まれていた眉間の皺をほぐす。

「俺は別に」
「気になるんでしょ、ナマエちゃん」
「お、お前」
「僕らタートルズは、女の子に涙なんか流させない!」

じゃーんと言うミケランジェロの手に握られていたのはカメラと、それから。

「マイキー、なんでその飴を」

あの夜、ナマエからもらった飴玉だった。
透明な袋に両端を捻って閉じ込められたその飴は、彼女の母親が手作りしたというもの。市販されているはずはないし、ナマエからもらった一つだけの飴は、未だ食べずに自分が持っている。
困惑していたら、口の中でなにかが転がる音を立てたラファエロ、ドナテロがやってきた。ミケランジェロは持っていた飴を口に放り込んで得意げに言う。

「ふふん。お礼は僕じゃなくて、建物の下に隠れようって言ったラファに言いなよ」
「余計なこと言うなマイキー!!」
「決行は今夜だ。レオ、準備して」
「準備って、なにを……」















明くる日の朝。ある少女の元に一枚の写真が届けられた。それは彼女の部屋の窓に差し込まれていて、写っていたのは、

「……わあ!」

月を背に、完全に影となった、それぞれの武器を掲げる異形の忍者四人の姿だったのである。



END
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