TMNT

□ペアルック!
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ここはタートルズが拠点とする下水道。その開けた空間の一つ、道場である。
今日の掃除当番である私は、己の持つ掃除術をフル活用して格闘。納得のいく仕上がりになり、あとは使った道具を片付けるだけとなったとき、私はそれを見つける。
赤地に「憤」の字が刻まれたマスク。ラファエロのものだ。彼の使う武器、釵と一緒に壁に掛けてある。

「すごいな、ナマエ。すっかり綺麗になったよ」
「レオ。ねえ、ラファは?」
「ラファ?シャワーじゃないか。奴がどうした?」
「これ、マスク。忘れていったみたい」
「ああ、それなら俺が言ってくるよ」
「え?じゃあこれ持っていっ……」

ラファエロのマスクを取って渡す前にレオナルドはシャワールームに向かってしまった。
しょうがない届けてあげようと掃除道具を置いて、ふと気付く。いつも持ち主が身につけているので、こうして手に取るのは初めてのこと。静かに眺めていたらちょっとした悪戯心が芽生えた。
(つけてみたい)
周りを見渡して誰もいないのを確認すると、思い切って頭にかぶってみた。案の定、彼に合わせたものなので私には大きすぎる。
ようやく右目を出す穴を見つけて自分のそれと合わせた。見えたのは道場の壁、ではなく、

「ナマエ!」
「うわあっ!!」

ミケランジェロのドアップだった。

「驚かせないでよマイキー」
「ごめんごめん!でもそれラファのだよね。なんでナマエが……ぶっ」
「しぃー!忘れていったの私が見つけたの。ちょっと被ってみたくて」

みんながやっているように頭の後ろでぎゅっと結べば、ヒューマン版ラファエロの完成だ。

「やっぱり私には大きいね」

へへっと笑いをこぼすとミケランジェロはぷっと吹き出す。

「見慣れたやつだからラファ思い出しちゃう!変なのー!」
「なんだか今なら力が強くなった気がする!どう?ほら筋肉」
「ついてるついてる。ちょっとだけだけど!」
「なに楽しそうに笑ってるの?」

静かにしていたつもりが、笑い声が漏れていたらしい。限られた視界の隅に紫色が見えた。

「もしかしてナマエ?わあ、ハハ!それ本物?」
「そうだよ」
「ねえねえナマエ、爪楊枝咥えるフリして」

ミケランジェロのリクエストに私は快く答える。エア爪楊枝を咥え、できるだけ低い声を出した。

「カワバンガ……」
「アッハハハハ!ナマエサイコー!」
「似てないけど似てる!ハハハ!」

あまりに二人が笑ってくれるのでこのままエア釵もやろうかとした時、

「おい、お前ら。ナマエ知らねぇか」

ぴたりと止まるドナテロとミケランジェロ。ついでに私。姿は二人に隠れていて見えないけれど、声でわかる。

ラファエロだ。

ばっと前を向いた二人は私を隠すように甲羅を並べた。

「や、やあー!お風呂上がり?」
「さ、さっぱりした?」
「ああ?」

わざとらしい二人にラファエロは訝しがり、私は焦る。もっとうまいごまかし方はなかったのか!いや、そんなことよりとにかく取らないと。怒られる!
手を後ろに回し、結び目をいじるが思った以上に固く結んでしまったらしい。ほどけない……!

「なんだよ気持ち悪りぃな」
「気持ち悪いことないよ僕らはいつも通りさ!ねえ、ドナ!」
「ああ、マイキー!いつも通りさ!」
「余計怪しいっつの……つか、その足ナマエだろ。なに隠してんだ。用があるからどけ」
「わっ!」
「うわっ!」

ラファエロの手が伸びて突き飛ばされたドナテロとミケランジェロ。結果、ラファエロの前に現れたのは中腰になって自分のマスクを被る私の姿だ。それを映したラファエロの目が、次の瞬間にかっと見開かれる。咄嗟に飛んでくるだろう怒声に身構えた。
……が、いつまでたっても何も聞こえてこない。恐る恐る目を開くと、私と同じように頭を抱えるドナテロ、ミケランジェロと視線が合う。三人一緒に首を傾げてラファエロを見れば、もうすでにバンダナを被っているんじゃないかと見間違えるほど顔を赤くしていた。

「ラ、ラファ……?」
「!!」

声をかけるとラファエロはびくりと肩を揺らす。

「なに真っ赤になってんの」
「なっ、なってねえ!!」
「あー、マイキー。ラファはもしかしたらペアルックみたいって思ったんじゃないかな」
「おおお、思ってねえよ!!」
「「図星だ」」
「図星じゃねぇー!!」

ラファエロはそう絶叫すると取りに来たはずのバンダナも持たず、道場を飛び出していった……。







「ごめん、ラファエロ。そんなに怒らないで」
「怒ってねえ」
「じゃあ、照れないで?」
「照れ……はあ?!照れてもねえよ!」
「もう!怒らないでってば」
「だから怒って……ああもう、俺に構うな!!」


END

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