TMNT

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ドナテロは表紙にマーカーペンで【Secret!】と大きく書かれた手帳を開いた。最初のページの書き始めを、声に出して読み始める。

「『とても気持ちよく、空を飛んだ夢を見た日のことだった……』」




私はそんな夢を見るのが初めてで、ついつい鳴り響く目覚まし時計を止めてまたベッドに潜り込んだ。けれど続きなんか見れなくて、「起きなさい!」っていうママの声が聞こえてきてしぶしぶベッドから出た。
そうしたらなんだか妙に体が軽い感じがしたの。そのとき気付けていたらよかったんだけど、学校に遅刻しちゃうから後回し。
着替えて部屋を飛び出して階段を降りるはずが、中途半端に靴下を履いていたみたいで、手前で大きく滑っちゃった。あっ落ちる!って思ったんだけど、次の瞬間、ふわっと体が浮いて、転ぶことなく階段の下に降り立ったの。

「オイラちょっと階段登ってこようかな」
「ミケランジェロ」

あれ?どうして?って混乱してたんだけど、ママに急かされてパンを食べたらすぐに学校に向かった。その日の授業は全く手につかなかった。だって私ちょっとだけとはいえ飛んだのよ。
帰り道の途中で友達と別れて、周りに誰もいないアパートを選んで階段を一番上まで駆け上がった。とっても怖かったけれど、試さなきゃ。私は手すりに上がって……飛び降りた。

「無茶するなこいつ」
「ミケランジェロ、わかってるよな?」
「真似しないよ!さっきのは冗談だってば。……半分は」

地面が迫ってぶつかるって思った時、ふわっと体が浮いた。朝と同じようにね。でも今度は降り立つんじゃなくてそのまま宙をしばらく飛んだの。
びっくりしたわ。意識しなくても思った通りに体が動いて宙を移動できた。地面を歩いたり走ったりするときと全く同じ、“これが当たり前”って感覚で。
それからよ。夜の遅い時間にママやパパに内緒で窓から抜け出すの。なぜって?練習したかったから。いまいち止まり方がわからないのよね。
だって、昼間に練習なんかして誰かに見られたらまずいじゃない。空を飛ぶ女の子よ。テレビで取り上げられて、新聞記者がひっきりなしに家に詰めかけるわ。
それもまあ悪くない気もするけど、変な実験の道具にされたら怖いもの。映画で見た。変な薬を飲まされたり、監禁されたり、血を採られたり……うえっ、そんなの嫌。

「うーん、なんか他人事じゃないね。もしそうなったら頼んだよラファエロ!」
「お前の血はピザ臭そうだな。というかなんで俺なんだよ」

それでも夜のニューヨークは明るいから黒い服を選んで着る。目立たないように。練習するときも、出来るだけビルの間とか、暗いところを通るの。急に行き止まりになってたりして練習にはもってこいだしね。

「……ん、ここからペンの色が変わってる。書き足したんだ」
「ドナちゃん、早く続き読んで」

うまく飛べるようになってきたから、私はマントを羽織ることにした。スーパーヒーローみたいじゃない?色はもちろん黒よ。クールだわ!
本当はもっとマスクとか手袋とか、できたらブーツも欲しいんだけど、まだ我慢ね。空を飛べても悪人をやっつけるような力は持っていないから、コスチュームはお預け。
練習していて見つけたんだけど、どうやらニューヨークの街には悪人がいっぱいいるみたい。怖いから近づけないけど、それも今のうちだけよ。強くなったらこてんぱんにしてやるんだから。

「頼もしいな」
「まあ警察呼ぶにはうってつけだな。空を飛べるんだから混雑なんか気にしなくていいだろ」

そうそう、悪人だけじゃなくて、正義の味方もいるみたいなの。パープルドラゴンっていう悪人が女の人を襲おうとしてるとき、思わず飛び出そうかとしたんだけどね。私より先に飛び出した四人組がいたの。

「四人組?」
「まさか」

日本の刀と、ヌンチャクと、棒。それからあれはなにかしら?二刀流の、先が尖ってるやつをそれぞれ持っているの。
……すっごくびっくりしたわ!多分、私が空を飛んだとき以上に。
だって彼らは亀だったの。甲羅を背負って、色違いのマスクをして。パープルドラゴンをあっという間にこらしめちゃった。あと、黒ずくめのニンジャとも戦ってた。ニンジャって本当にいるのね!しかもこのニューヨークに!ちょっと感動しちゃった。
まあでも彼ら、戦ってるっていうより暴れてるって感じだったけど。

「暴れてるって」
「あいつ今度会ったら覚えてろよ」

でも、すごかったな。私もあんな風に自分専用の武器を持って戦ってみたい。あれくらい筋肉つけないとだめかしら?腹筋とか私、苦手なのよね。
でも私は、彼らと違って頑丈な甲羅はないけれど空を飛べるから、違う方法でヒーローになれるかも。
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