TMNT

□めくるめく
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深夜のバイト終わり。晴れやかな気分で自宅に向かっていると、キィンッ。甲高い音が聞こえた。
昼間は人通りの多いこのメインストリートも、深夜となれば人っ子一人歩いていない。一体どこからだろうと辺りを見渡していたら再び甲高い音。……上から?

「あれ、ナマエじゃん!」
「ミケランジェロ?」

聞こえてきたのはやはり頭上から。仰ぎ見た建物の屋上からひょっこり顔を出したのはなんと、亀でミュータントな友達、ミケランジェロだった。屋上で手を振る彼に深夜であることを配慮しつつ、声を張り上げた。

「こんな時間に会うなんて奇遇ねー!パトロール?」
「いやあ、そんなとこだったんだけどさー!」
「なにしてるんだよミケランジェロ!今はよそ見なんかしてる場合じゃないだろ!」
「あ、ドナテロもいるのー?」
「その声は……ナマエ!?」

続いて顔を出したのは亀でミュータントな友達二人目、ドナテロだ。ところが彼はミケランジェロのように笑顔など浮かべておらず、代わりに焦りを浮かべている。

「これはまずいことになったぞ」
「おい、ドナテロにミケランジェロ!そっちに行ったぞ何やってるんだ!」
「うわっ!」
「きゃー!?」

紫とオレンジのマスクが引っ込んで、代わりにまたあの甲高い音が聞こえてくる。しかもキィンッキンッキンッカッ!と激しさが増している。弾かれたと思しき手裏剣が私の足元に降ってきて、もしかして。もしかしなくともこれは。

「ナマエ!」
「わっ!?びっくりした」

突然私の目の前に降り立った青と赤のマスク。亀でミュータントな以下略。レオナルドとラファエロだ。彼らは四兄弟なのである。
「こっこれ、フット団?」それぞれ武器を構えたまま近寄ってくるので仰け反りつつ聞けば案の定だった。話せば長くなるので割愛するが、彼らは少々厄介な状況に身を置いている。

「ああ、そうなんだ。ナマエ、ここは危ない。だから」
「おい」

レオナルドの言葉を遮ってラファエロが詰め寄ってきた。まずい、雷が落ちる!

「お前、なんでこんな時間に外うろついてんだ」
「じ、実は、その……バイトで」
「バイトォ!?深夜はやめろっつったろ、あの時みたいに襲われたらどうすんだ!!」
「うっ、ごめんなさい」

やっぱり落ちた、と首をすくめた。あの時もこうして怒られたっけ。というのも私が彼らと出会った時もこんな状況だった。
時刻はやはり、今のような深夜。バイト帰りの私は頭の悪そうな連中に絡まれて、バッグを盗られそうになったのだ。ところが突如現れた彼らに助けられることになる。
そりゃあ最初は驚いたけれど話してみればなんと彼らの気さくなことか。ティーンエイジャーだと言うし、割と歳の近かった私はそうして彼らと仲良くなった。
深夜の一人歩きは危ない。女性なんだからなおのこと、とお灸を据えられたのもその時。私は深夜のバイトはもうしないと誓った。はずだった。
応援しているアーティストのニューアルバム、初回限定盤に特典マル秘映像DVDがつくと知るまでは。

「なんて、口が裂けても言えないけど」
「ああ?裂いてやろうか今すぐに」
「ヒッ」
「ラファエロ、今は時間がないんだ。まずはナマエを安全な場所に、!」

またもレオナルドの言葉を遮ったのはラファエロ……ではなく、一本のクナイだった。足元に深々と突き刺さったそれを見るや否や、さっと背中に庇ってくれるレオナルドとラファエロ。程なくしてドナテロとミケランジェロも私たちの元に降り立ち構えのポーズをとった。私はというと彼らの真ん中で降参のポーズ。

「ひょ、ひょっとして私、かなりまずい時に会っちゃった?」
「今頃気づいたのかよ」
「ナマエはまず危機感を覚えるべきだね」
「まったく。久しぶりなのにこりゃないよ」
「お前ら話してる暇はない、来るぞ!」
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