TMNT

□いつまでも
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※幼妹設定



「ねえ、ラファその本おもしろい?」
「まったく」
「わたしにも見せて」
「あとでな」
「ええー」

「ケチ」と文句を言いながらソファーに上がり、体育座りをするナマエ。その両足を抱えた手に赤い線が入っているのをラファエロの目は見逃さなかった。








ナマエと───主にラファエロの騒ぎ声が聞こえてきて思わず作業の手を止める。段々と近づいてきていることに気づいて顔を上げると、ちょうどその二人が顔を出したところだった。

「だからなんともないったら!」
「なんともねえわけねえだろ!」
「どうしたの?」

ラファエロの小脇に抱えられた、どうやら騒ぎの原因らしいナマエに聞くが、答えは彼女ではなくお怒り気味の兄弟から聞かされる。

「こいつ、手に怪我してやがる」
「怪我?」
「してないよ!平気だってば!」
「オラ見せろ」
「いやー!」

ラファエロの力に叶うはずがなく、捕らえられて差し出されたナマエの小さな手にはなるほど、すっと細く赤い線が引かれている。

「うん、ばっちり怪我してるね」
「お前これどうしたんだよ」

ラファエロの質問にナマエは口を引き結んで答えようとしない。しびれを切らしたラファエロは「なんだと思う」と僕に聞いてきた。僕はちらりとナマエの顔を見てから彼女の右手をとって傷口を見る。

「ふむ。切り口から見ると、これは………紙だね」
「はあ?紙ぃ?」
「うん、紙。雑誌か何か?痛かったでしょ」

やはり何も答えないナマエだったが少し困ったような顔をして僕を見た。

「消毒してあげるからおいで。……ほらラファ、ナマエ下ろして。治療できないじゃないか」
「本当に紙なんだな?」
「そうだよ。なんで?」

数秒目を合わせて、ついっと肩をすくめたのはラファエロだった。

「わかったよ。ナマエ、今度から傷ほったらかすんじゃねえぞ」
「……うん」

ラファエロが去り、ナマエを連れて針治療の部屋に向かった。
棚から救急箱を取り出し、消毒液を傷口に吹きかけ余分なそれを拭き取ってガーゼを当てるまで、ナマエは一言も話さず顔をしかめていた。不機嫌や痛みのそれではなく、怒られるのを怖がっているようなそれである。
ため息をついて、僕は救急箱を棚に片付けながら言った。

「ラファエロの釵。それかレオナルドの刀かな」
「……!」
「ミケランジェロの鎖鎌っていうのもあるか。確かなのは僕の棒ではないってことだね」
「ドナ」

振り返るとナマエは泣きそうな顔をして僕を見上げていた。

「なんでわかったの?」

あの切り口はどう見ても紙じゃない。だからラファエロは不審な傷を訝しがったし、ごまかそうとする僕を疑った。そこに最近のナマエのおかしな様子も合わせれば、怪我の原因を話さない理由にたどり着く。

「ナマエのことなら僕にはなんでもお見通しさ。で、どれだった?」
「……ラファの」
「そっか」

ナマエと視線を合わせるためにしゃがむと、反省している彼女が可哀想だけどこれだけは見逃せない。


「駄目じゃないか、僕らの留守中に道場に入っちゃ」
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