TMNT
□夜更かしサンドイッチ
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「ドニー」
振り返るとナマエだった。もっともこの地下で女の子の声を聞くには彼女に話しかけるか、テレビをつけるしかない。
「どうしたの?」
「ドニーこそ。夜食?」
「うん、お腹すいちゃって。そういうナマエは?」
「同じ理由」
ナマエが僕の手元を覗き込む。「スクランブルエッグを挟んだだけのサンドイッチ?」なにも言い返せなかったので肩をすくめると、ナマエは笑った。
「ずいぶん寂しいサンドイッチね」
冷たいスクランブルエッグに、レタスとトマト、ベーコンが加わった。
貧弱だったパンが見事に膨らんでいて食欲を誘う。色合いも抜群だし、料理は見た目も大事なんだとしみじみ思った。そう、僕が喜ぶとナマエは大げさだと笑う。大げさなもんか。他の兄弟なら冷凍のピザを温めて終わりにしてしまうところだ。
僕がしたのは冷蔵庫から牛乳を出したことぐらいで、向かいのテーブルについたナマエのコップに並々そそいでやる。
「ありがとう」
「ねえ、本当にそれだけでいいの?」
「いいの。ドニーのとっちゃ悪いでしょ」
「別にいいのに」
半分こではなく、三分の二と一。ミルクで喉を潤すのもほどほどに、夜食にするには少々豪華なそれを一口食べた。ベーコンの熱が移って酸味が一層強まったトマトがすこぶる美味しい。冷たいスクランブルエッグが無性に物悲しく感じる。
作業中は気にならなかった空腹感が急に押し寄せてきて、ナマエが偶然起きてきてくれてよかったと思った。
「ドニー」
「うん?」
「進捗具合はどう?」
「まあまあかな。でも、ひと段落ついたんだ。最後の大詰めの前に休憩を取っておこうと思って」
ナマエの顔が曇る。「まだ終わらないの?」
僕が何日もラボにこもるのはいつものことだから、兄弟たちもスプリンター先生もなにも言ってこない。強いていうならこうしてナマエが聞いてくるくらいだ。
今回ラボにこもり始めたのは何日前だったかな……。食事を運んでくるレオナルドが呆れた顔をしていたから、たぶん四日前だ。だからこうして誰かと食事を取るのも四日ぶりってこと。まあ確かに、これじゃあ呆れるか。