人見知り芸人@
□雨夢心
3ページ/3ページ
**
「……っ…!!」
……ほら、まただ。
ここで決まって目が覚める。
「…あれ…?どうした?」
「……ごめんなさい、起こしちゃいました?」
「いや、いいけど………なんか、悲しそうな顔してるから…」
この人は、いつも優しい。
僕なんかに優しくしたって何も無いのに。
僕はいつまでこの人の好意に甘えていられるんだろう。
「……なんでもないですよ」
いっそのこと、この人を忘れたくなるくらい、散々振り回してくれればいいのに。
そして、バッサリ縁を切ってくれればいいのに……
そう思ってしまう。
「…でも、元気なさそうに見える」
「……そうですか?」
「なんかあったら言えよ?ともちゃんはなんでもため込んで、一人で悩んじゃうんだから」
「……はい…」
優しい、から。
だからこのままでいいや、と思ってしまう。
本当にいいのかな…?
有吉さんの大切なものを、僕が奪ってるんじゃないかな…?
「………有吉さん」
「ん?」
「…………僕、最近よく同じ夢を見るんです……」
隠しているのも失礼な気がして、全てを有吉さんに話す。
「……そんなこと気にすんなって…俺は、ともちゃんとこうしていれることが、一番幸せだよ?こんなに楽しいことってあるんだなって思ってる………………ともちゃんは違うの…?」
「……僕、は…」
窓の外は、雨が降り続いている。
「………幸せ…です……」
「うん………泣くなよ…大丈夫だから…ね?」
この雨は、いつ止むのだろうか。
end
2013.12.31