人見知り芸人@
□したい、
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仕事帰り、一旦家に帰ると
いないはずの升野が買い物袋を抱えて玄関にいた。
「あ、おかえりー」
「...あれ、仕事は?」
「別日になった。LINE届いてなかった?」
「見てなかった」
「そっか」
「それ、何買ってきたの?」
買い物袋からは、ネギらしいものが見えていた。
「ご飯作ろうと思って」
「あのさ、」
「ん?」
「...仕事、入っちゃって」
「......あ、そうなんだ。今から?」
「うん」
「そっかあ、頑張ってね」
「ごめんな」
「謝ることないよ」
「じゃあ行ってくる」
「いってらっしゃい」
...浮気、だった。
元からないわけではなかったが、強い罪悪感が襲ってきた。
浮気と言っても風俗程度の認識でしかなく、フリーだと言っていた彼女と数回、行為に及んでいた。
もちろん、升野に対する愛情が薄れたわけではなく、代わりのつもりだ。
今のところ、ありがたいことに2人とも忙しい。升野は仕事が終わってから、休日までも作業場に行き、作業をしているのだ。
ただ、ここ数日は脚本作業が落ち着いたらしく、自宅で作業する事も多くなっていた。
数ヶ月の間、一度もしていない。一緒にいる事が少ないので、会えればなおさら、だ。
正直、レギュラー番組の収録時は耐えるのも限界である。反省するべきは俺なのだろう。
結局その日、彼女とは会わなかった。
しかし仕事と伝え、直接言ってはいないものの、夕食を食べないという事を匂わせて来た以上、あまり早く帰るのも怪しまれるだろうと、適当に時間を潰す。
なんとなくTwitterを確認すると、(フォローをしていないので検索をする)
先ほど買っていたであろう材料で作られた鍋の写真だけツイートされていた。
リプライ欄には
「彼女の手料理!?」「一人鍋...?」「家庭的ですね」「女子力高い」などの反応があった。
「......帰ろう」