FAIRY TAIL 短編

□第1次チョコ争奪戦争
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2月13日、
バレンタインデー前日。

時刻は夕方。



フェアリーテイルは
いつもより少しだけ騒ぎが増していた。

それは翌日2月14日が
バレンタインデーだからだ。




そんな中、ルーシィはキョロキョロとギルドの中から誰かを探していた。

その表情はとてもニヤついている。



「あっ!いた!グレーイ!」

「ん?」



ルーシィに呼ばれ、
椅子に座ってテーブルに頬杖をついていたグレイはルーシィの呼びかけにクルっと振り返った。

しかし、ルーシィの表情はとてもニヤついているのだ。明らかめんどくさい事が起きそうだと、心の中で思うグレイ。



「あれ?そういえばジュビアはいないのね?珍しいじゃない。
(思わず大声でグレイの事呼んじゃったけど、ジュビアがいなくてよかったわ。下手したら殺されてたかも…)」



ルーシィはそう思い冷や汗をかきながらグレイの隣に座った。



「あぁ、明日楽しみにしてろって言われてさっきどっか行ったんだよ。」


「はは〜ん!やっぱりジュビアはグレイにチョコをあげるのね!」


「あぁ、そういやぁ、バレンタインデーは明日か。」



その途端に、グレイはギクッと体を強張らせた。
グレイ…いや、ギルドの男みんなはバレンタインデーには苦い思い出があったからだ。



「ねー、グレイは勿論モカから欲しいんでしょ!?」


「ぜってぇルーシィは言うと思ったよ。だがなぁ、ルーシィ。人生はそう甘くねぇんだよ。」


「え?どういうこと?」



グレイは、はぁ。とため息を吐くと、突然ルーシィの隣にナツが座ってきた。



「よぉ!ルーシィ!明日チョコくれよな!」


「なんでアンタは催促するのよ。
そういう人にはあげないって決めてるのー!」


「チッ、ルーシィはケチだ!」


「ケチだ!」



ナツの言葉の後にハッピーが続いた。
すると今度は、ルーシィの向かい側に面白く笑っているエルザが座る。



「ナツ、モカからのチョコはいらないのか?」

「…」



唐突なそのエルザの言葉にナツは身震いをして、顔を真っ青にした。



「え?ナツ!?どうしたのよ?」



わけがわからず戸惑っているルーシィにグレイはポンと肩に手を置いた。

そのグレイの表情は何故か清々しかった。



「モカのチョコはな、
そりゃあ体が焼かれるほどにすげぇまずいんだよ….」

「え?」



ルーシィはあり得ない、と目をまん丸にした。
あのおしとやかで誰にでも愛される可愛い少女が、お菓子が作れない!?

すると昨年の悲惨な事件を思い出したのか、グレイも身震いをして顔が真っ青になった。



「モカは毎年毎年、ギルド内の男性にチョコを作って渡してるんだが…まぁ、その味が壮絶なものでな。
昨年は確かグレイとナツが病院送りになってしまったんだ。」


「ええっ!?そんなに!?
(完璧なモカでも弱点はあったのねぇ。)」


「あぁ、ミラや私が何回も教えてやってもモカは全く上達しないんだ。ある意味天才だと私は思うがな。」


「あらぁ〜。グレイも複雑ね。
好きな人からもらえるチョコが激マズだなんて。」


「しかもそのチョコをモカの目の前で食わねぇとあいつ大声で泣き出すんだ。もう、めんどくせぇよ。」


「ハッピー!俺まだ死にたくねぇよ!」


「オイラもだよ!ナツゥゥ!」



これはバレンタインデー改革しないと。と思うルーシィは、ポンっと何かをひらめいたようだった。



「わかった!私がモカにチョコの作り方を教えるわ!」


「ルーシィ、私も教えたんだが、
モカに教えるのには根気がいるぞ」


「大丈夫!これでも私、料理は得意なの!」


「ルーシィ、希望はお前に託されてんだ!任せたぞ!」


「任せといて!グレイ!」


「じゃあルーシィ、俺にチョコくれよ。」


「だからそう人にはあげないって言ってんでしょ!」



一通り全員につっこみおえたルーシィは早速モカを探し始めた。



「(なんだか燃えてきたぁっ!
モカに美味しいチョコの作り方を教えてあげて、グレイと成功して欲しいわねぇ〜!)」



建て替えた大きいギルドの中を探していると、2階にモカの後ろ姿を発見した。

ルーシィはすぐモカを見つけると、階段を急いで上がりモカを呼んだ。



「モカ!ちょっといい?」

『ん?ルーシィ?』



モカの隣にはミラジェーンがいて、その彼女の手にはレシピブックが広げられていた。



「モカ!今日は私の家に来なさい!特訓よ!」


『え?ルーシィ、ごめんね。
せっかく誘ってくれたのは嬉しいけど、私今日はチョコ作らないと…』


「だぁかぁらぁ!チョコの特訓!
私の家でチョコ作るの!」


『えぇっ!?いいのっ?』



隣にいるミラジェーンはクスクスと微笑んでいた。



「よかったじゃないモカ。
一緒に作ってくれる人がいて。

ねぇ、ルーシィ。
モカは今年はトリュフに挑戦したいそうよ!」


「トリュフ?そんなの簡単よ!
湯煎で溶かして生クリームいれればいいんだもの!」


『やったぁ!ルーシィありがとう!
…喜んで食べてくれるといいなっ。』



そう楽しそうに言ったモカは1階に目を向けた。どうやら誰かを見つめているようだ。



「(あれ?モカが見つめてるのってまさかグレイ!?
あの目線の先は絶対グレイよね!?
まさかこれは両想いかしら!)」



ルーシィはふふ、と微笑むと、
早速モカの手を握り、自分の家へと走って行った。

ミラジェーンが楽しそうに手を振っている。




だがしかし、その夜ルーシィの家からは悲鳴が沢山聞こえたとか。。。










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