灰の色

□涙の意味
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動かない身体

理解するまでに時間は必要なかった。
(ああ、俺ァ死ぬんだな)



涙の意味




胸に受けた銃弾が重たく残る。
皆が泣いてる。
俺を見て泣いてる。

(…泣いてやがる、あいつが、約束したのによ…泣かないって)


目の前で大粒の涙を流し、座り込む女。
(…泣くなっていったろ、何、泣いてやがる。笑えよ)

「荒垣先輩っ…‼やだ、やだ‼」


(お前には笑っていて欲しいんだよ、お前には笑顔が似合う)


言葉をかけたいが、口も身体も何もかも動かない。
もどかしくて、イライラする。

(泣くな、心配になんだろーがよ)


「やだ、嫌だ‼荒垣先輩、荒垣先輩‼う、ぁあああ‼」


(お前が心配だって言ってんだろ、聞けよ)


どんどん身体が、意識が離れていく。
この世に未練を残さないようにしてたのに。最期にミスをした。
最大のミス。

「やだっ、だめ!駄目だよ…!せんぱい、せん、ぱい!」

もう遠い、暗い所まで落ちた。
でも先には行けない、いや行かない。

(お前の笑顔を見るまで死ねねェじゃねーかよ…)

「ば、…か…」
「あ、らがき…せんぱい?」

涙で真っ赤になった目がこちらを見ている。
俺は今、どんな顔をしているのだろう。

(前だけを見てろ、後ろは見るな。大丈夫だ、俺がお前を守ってやる)



もう瞼すら開けてられない。
(これまでか…)
そのまま意識を手放した。



次に目が覚めるのは
まだまだ先の話。



(お前を置いて先に死んだりしねェよ…だから泣くな)


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