灰の色

□惚れた弱み
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天然、なんて言ったら否定されるだろうと思うけど。
私は最近よく言いたくなるのだ。
彼を見ていると。





「リーダー、帰るぞ」
「真田先輩…」

金曜日の放課後。
真田先輩は必ず私の教室を訪れる。
今日に限った事じゃない。
最近は毎日だ。



つまりは順平の入れ知恵と、綾時への牽制を兼ねているみたいなのだが。



普通なら彼が教室に毎日顔を見せてくれるなんて、幸せな事なのだけど。
私たちは他のカップルとは少し事情が違うのだ。

(彼がファンクラブも存在するぐらいの人気者という点で)



先輩がクラスに来るごとに黄色い声と怒りの声。
陰口なんて日常茶飯事。


(…もう少し、自分のモテ具合を理解して…なんて私は我が儘かなあ)


もちろん、そんなモテ具合を毎日、目の当たりにするのもいい気はしない訳で。




今までは先輩が昼休みにわざとらしく…じゃなかった。
たまたまうちの教室前を通った時だけ、声をかけてくれるので、その時だけ一緒に帰っていたのだが。





(あの日からか…)



先日、はじめて先輩と大喧嘩したのだ。

ものすごい大喧嘩。
大喧嘩の原因は綾時。
綾時が私の手を握って、校門から連れ去る瞬間を見ていたらしくて。

寮に戻ってから大変であったのだ。喧嘩の詳しい話は後日、また話すとして。

まあその時に順平が
「そんな心配なら教室まで毎日くればリーダーに手を出す奴なんか居なくなりますよ〜!」
なんて入れ知恵したものだから。
「そ、そうか」
なんて微妙に納得している先輩を見て、多少の不安はあったのだけど。


つまりあの日から本当に毎日。
部活がある日は、部活前に教室に現れてから部活に行く日々。


「リーダー…なんか俺っち、まずいことしちゃった?」
「したよ、本当。なにしてくれてんの」
「いやあ…まさか真田さん、本気でするとは」

苦笑いする順平。
(アンタの入れ知恵の賜物だって)

「どうしたリーダー、置いていくぞ?」
「待ってください、今行きますから」

(順平…先輩ならするよ。天然なんだから)


なんて本人目の前にして言えるわけもなく、苦笑いするしかなかった。


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