君と共に
□第一話 出会いは衝撃
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「はぁはぁ・・・」
一体どれ位走ったのだろう。
知り合いの貨物船の中でミーシャは呼吸を整えた。
ここまで来ればあいつ等はもう来ない。
ふーっとため息を付くと右手で髪の毛をつかみ引っ張った。
黒くパーマのかかったウィッグのしたからサラサラとした明るいストレートの茶色の髪が自由をもとめる様に出てきた。
後はあの子が来れば私たちはあいつとはおさらば出きる。
仲間の手助けで荷物と荷物の間に身を潜ませていると昨夜の夜更かしか、安心したのか睡魔が襲う。
大丈夫ルーナはきっと来る・・・
自分に言い聞かせるように誘惑に負けゆっくりとミーシャは目を閉じた。
「ミーシャ、ミーシャ」
どれ位眠っていたのだろう。船はもう島を出たのかかすかに波の音が聞こえる。
「ん。おじちゃん?ルーナは?」
私たちの協力者。昔、母に助けられた事のある彼がこの船の協力者だった。
「すまねぇ。ギリギリ待ってはいたんだがルーナは来なかった。」
おじちゃんの言っていることがよく分からない。
来なかった?
ルーナが?
「うそだ。そんなの。じゃあ、あの子はまだあの島に?!おじちゃん私を今すぐ降ろして!!」
「無茶いうな。今は海のど真ん中だ。こんなところで降りたらどうなるか分かっているだろう。」
今にも飛び出していきそうなミーシャの肩を押さえ、男は必死に宥める。
「俺達も荷物をつめる振りをして探したんだ。だが何処にもいなかった。あいつ等に捕まった様子もねぇ。大丈夫だ。ルーナはお前の妹だろ。きっと上手く逃げれてる。」
「・・・ごめん。おじちゃん。」
今すぐにでも探しにいきたいのをミーシャは必死に堪える。
おじちゃんは全力を尽くしてくれた。
命の恩人の娘という何とも薄い繋がりなのに、こんなに頑張ってくれた人を恨むなんて出来ない。
「おじちゃん。この貨物船の次の停泊する島で私を降ろして。」
おじちゃんはゴツゴツとした手でミーシャの頭を撫で頷いた。
次の島までの数日間。
島にいる仲間と連絡をとり、私に情報を与えてくれた。
・ルーナが島にいる様子はなく、向こうも探している様子であること。
・あの日以降島から船は出ていないこと。
そして少し気になったのが、一艘の小船が同じ日に波に流されたのか無くなっている事。
気にはなったが無人の船が流されているのを見たという人もいたとの事だったので気にはしない方がいいというものだった。
「じゃあ、ミーシャ。俺達は次の島へ荷物を届けにいかなきゃならねぇ。」
次の島で約束通り降ろしてくれたおじちゃんの顔は心配しているのが手に取るように分かる。
「うん。ありがとう。おじちゃん。私は大丈夫だから。」
島から持ってきた少しの荷物を肩に担ぎなおしながらミーシャは心配させない様に笑顔をみせる。
「この島にある酒場のおやじは俺の知り合いだ。話はしてあるからそいつを頼るといい。」
何から何まで本当に至れりつくせりだ。
煙をあげ港を出港するおじちゃん達の姿が見えなくなるまでミーシャは手を振り続けた。
さっき確認したところ今日でる船はないらしい。
明日から港でもう二度と行くことがないと思っていたあの島へ向かう船を探さなければならない。
ミーシャは軽く体を伸ばした後、おじちゃんの行っていた酒場を目指した。