君と共に
□第五話 秘密
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船がカルジャを出港して何時間たった頃ミーシャはローに呼ばれ船長室へ来ていた。
「話って何?船長さん。」
「話の前に船長さんはやめろ。」
「でも私はもうクルーとして船にいるんでしょ?キャプテンの方がいい?」
「どちらでも呼ぶな。ローでいい。」
「え・・・うーん。それで良いならそう呼ぶけど。で、話は何?ロー。」
以前泣いた日の事を一瞬思い出し顔が熱くなった。
「ミーシャを拉致した奴等のことだ。言っておきたいことがある。」
その顔は真剣だった。
ミーシャの顔からも笑顔が消える。
「ジョーカーという名は聞いたことがあるか?」
ローの言葉にミーシャは首を横に振る。
「闇のブローカー。悪い話には大抵絡んでくる奴だ。本名ドンキーホーテ・ドフラミンゴ。俺はかつてそいつの部下だった。」
その言葉にミーシャの顔が強張る。
「それって・・・私達の事にもジョーカーが関わってたってこと?」
「恐らくな。ベラミーって奴も恐らく傘下の一人だろう。直接の関わりはなかったとしても裏で糸を引いていたのは間違いない。」
「そっか・・・でもローは今は仲間じゃないんでしょ?それともまだ繋がりがあるの?」
「繋がりがゼロとは言い切れない。だか俺はあいつの意見に賛同していないし、従う気もない。今はそうとしか言えない。」
二人の間に長い沈黙が流れる。
「話してくれてありがとう。繋がりがゼロじゃなくてもローの心がその人と違うなら良かった。私はローに着いていくよ。それにもう船は航海中なんだもの降りることなんて出来ないわ。」
ミーシャはそう言って笑顔を見せた。
ローはそれに内心ホッとしていた。
ミーシャは部屋に戻った後少し考えていた。
私達を陥れた存在とローの繋がり。
いつか対峙する時が来るのかもしれない。
今はその時ではないけれど、力をつけておきたいと思いが芽生えてきた。
手首を見ると縛られていたときの痕がまだくっきりと残る。
強くなりたい。
私を仲間と認めてくれた彼等の足手まといにならないように・・・。
コンコン部屋をノックする音で目が覚めた。
どうやら眠っていたらしい。
扉を開けるとベポが立っていた。
「ベポ?どうしたの?」
「今からミーシャの歓迎会をやるから食堂に行こうよ。」
そう言うとベポはミーシャの返事も聞かずに手をとって食堂まで連れて行く。
食堂は主役を待たずに始まっていた歓迎会でお酒の香りが漂っていた。
「おーミーシャ来たか。お前の歓迎会だー飲め、飲め。」
「大分できあがってるね・・・シャチ。」
顔を赤くしているシャチは適当にグラスを出すとコポコポと酒を注ぎミーシャに渡した。
ミーシャはそれを受け取りつつ少し離れた所に座った。
元々騒ぐのが好きなのか盛り上がっている。
ミーシャはそれを少し離れた所で眺めるが楽しかった。
「今日の主役なんだ。もっと真ん中に行ったらどうだ?」
「ペンギン。」
そう言ってミーシャの横にペンギンも腰掛けた。
「いいの。こうして見てる方が楽しいから。それに歓迎会っていうは名目みたいなものでしょ?」
「まあな。」
ペンギンはクスリと笑うと持っていたグラスの酒を飲み干した。
ミーシャもシャチからもらったお酒を一口飲んで見た。
喉を熱いのが流れる。
「結構強いお酒ね。これ。」
「弱いのか?」
「ううん。そう言うわけじゃないけど・・・」
「そうか。だが船長が飲む酒の方がもっと強いぞ。」
ペンギンは近くにあった瓶から酒を注ぎながら話した。
「そうなの?そう言えばローは何処にいるの?」
ミーシャのその一言にペンギン、騒いでいたシャチたちも驚いた様にミーシャを見た。
「え、何?どうしたの皆。私何か変なこと言った?」
「ミーシャ。お前今なんて言った?」
青い顔をしたシャチが言う。
「私変なこと言った?」
「その前!!」
「んーと。ローは何処にいるの?」
「ミーシャ。キャプテンの事呼び捨てで言うんだねー。」
ベポの言葉に他のクルー達も頷く。
「だってローがそう呼べって言うんだもの。」
またしてもシャチたちは驚いていた。
ペンギンは一人納得したような顔をしていた。
「船長は気分が乗らないって部屋にいるぞ。」
「そっか。行ってみようかな。ありがとうペンギン。」
ミーシャはそう言うと近くにあったつまみとお酒を持って食堂を出て行った。
「なぁなぁペンギン。ミーシャって無自覚か?」
シャチは食堂の入り口を見つめながら横にいるペンギンに話しかけた。
「いや。多分船長も無自覚だろ。」
これからは大変そうだなっと小さく呟いた後ペンギンはグラスに口をつけた。