夜鴉翼のブック
□ごろつき横町の住人
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幼い頃の約束
まだ覚えているか
きっとおまえは忘れているだろう
思い出してくれたら嬉しいが
今はまだいい
おまえのことだから
きっとなんとかなるだろう
江戸の城下にありますとある町を、人々はごろつき横町と呼んでおります。
なぜにごろつき横町なのか。それは不満や怒り、憎しみを抱いた者たちが、集まり暮らす町であるからでございます。
その者たちは、あるものは世の中を変えるため、あるものは敵討ちのために日夜奔走し暮らしております。
そんなごろつき横町の、奥から五番目の小さな部屋、そこから二人の影が現れました。
一人はなかなかの長身に、短く切った黒髪の青年。人のよさそうな面立ちに、帯の隙間から撃鉄がのぞいております。
かたや、長い髪を一つに束ね、どこか冷たい印象をもたせる女性でございます。その腰には刀が二振り。
このふたり、共に両親殺されて、仇討ちしようと決意したは三年前の年の暮れ。
さてさてここで、この話の幕が上がります。