安元洋貴

□好きなあの人に贈り物
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今日はアニメのイベントでとあるスタジオに来ていた。

「安元さん!こっちこっち!」

スタジオに入ると手招きと共に中村に呼ばれる
「あれ?その箱何?」

中村の近くに行くと綺麗に包装された箱が目についた。

「あ、これですか?これはバレンタインが近いのとお近づきの印にって新人の子が配ってましたよ」

他の人も貰ってたみたいですけど、安元さん貰ってないんですか?。中村はそう言って不思議そうに首を傾げた。

「あー、うん、貰ってない」

よくよく辺りを見回すとほとんどの人が新人の子に貰ったと見受けられる箱を持っている。

………あれ?もしかして貰ってないの俺だけ?

「あ、人多かったから、きっと渡しそびれたんですよ」

「んー…そうかな」

「貰いに行きますか?」

俺から貰いに行けば良いんだろうけど、自分からは正直行きづらい。

「みなさんスタンバイお願いします!」

「「………」」

とりあえず、仕事しようか





「お疲れ様でした!」

「お疲れ様ー」

「お疲れ様です!」

イベントも無事に終わりあとは帰るだけになった。

「安元さん、ま、待ってくださいよ!」

中村は無視してそろそろ無くなりそうな食材でも買いに行こうと楽屋を出た。

「ゆう、覚悟はできた?」

「いやいや、できない。絶対無理」

てか覚悟って何?なんの覚悟?。楽屋を出るとそんな会話が聞こえてきた。

「なんの覚悟ってそりゃあ、愛しの安元洋貴様にチョコを渡す覚悟よ!」

………………………ん?

「っななな、何言って!ただの憧れだから!い、愛しのとか、そんなんじゃ!」

「えー?本当にただの憧れなら朝にチョコ渡せたんじゃないのぉ?」

…あー、聞かなかったことにして楽屋に戻…「安元さん待ってくださいってば!」………中村ぁぁぁああぁあぁ!!

「「え?」」

ああ、バレた





「じゃあ、私帰りますね。中村さん、よろしければ一緒に帰りましょう」

「え、と、「帰りましょう」あの、でも「帰りましょう」いや、その「帰るぞ」…ハイ」

香月さん?(だったかな?)は中村を無理矢理引き連れて帰っていった。

必然的に俺とゆうさん?だけが残される。

「…帰っちゃいましたね」

「…そうだね」

「「………」」

うん、気まずい。しかし、ここは俺が話しかけるべきなんだろう。

「あのさ、…」

「?はい」

どうしたものか、会話が出てこない。

とりあえず、何か。何か。

「名前聞いて無かったよね。俺安元洋貴です。」

「あ、加藤ゆうです」

「「………」」

はい、会話終了ー。沈黙TIME。

「あの、安元さん。これ、よろしければどうぞ」

沈黙を破るようにゆうさんに綺麗に包装された箱を差し出される。

「チョコレートです。他のみなさんには渡したんですが、安元さんには渡せてなかったので」

「ああ、ありがとう」

感謝の言葉と共に受け取ろうとして、動きが止まった。

「安元さん?どうかしたんですか?」

「そういえば、"愛しの〜"っていうのが気になるんだけど」

わざと怪しい笑みを浮かべて一歩、また一歩と近付く。

「〜っ!き、聞いてたんですか!?」

彼女は頬を赤く染めながらも距離をあけるように後ずさる。

「"聞いた"じゃなくて、"聞こえた"が正しいかな」

嘘は言ってないよ。楽屋を出たら偶然聞こえたのは事実だからね。

「それで?"愛しの"…誰だったかな?君の口から直接聞きたいんだけど」

トン、と軽い音をたてて彼女の体が壁にぶつかった。

逃がさないように壁に手をつく。それでも彼女は逃げようと動いた。

今度は動けないように体を密着させて拘束する。

「何逃げようとしてるの?逃がさないよ」

「っあ」

ゆっくり、けれど確実に俺と彼女の陰が重なった。


「……あれ?」

いや、いやいや、いやいやいやいやいや、まて、冷静になれ。俺は今何をした?

………………はい、今日初めて会った新人の子にキスしました。はい。

………ちょっま、俺ぇぇえぇえ!え、え、いきなり何しちゃってんの?犯罪だよ?捕まっちゃうよ?良いの?良いの?良くないよ!!

「うぁぁああぁ!」

「きゃ!?」

いや、マジでヤバイって。

しかも今日初めて会った子にって!

「恥ずかし…」

思わず顔に熱が集まる。きっと今の俺はかなり赤くなってると思う。

「本当にごめん!」

本当に申し訳なく思って何度も何度も謝る。

「そんなに謝らないでください。もう大丈夫ですから、ね?」

「いや、でもっ」

「じゃあ…」

謝らないでくださいと言われても止めない俺に、彼女
謝るかわりに受け取ってくださいとまた箱を差し出してきた。

「安元さん…私、恥ずかしかったけど、嬉しかったです。私これから安元さんに振り向いてもらえるように頑張ります!」

ペコリとお辞儀をすると彼女は走り去って行った
「…楽しみにしてるよ」

自然と言葉がこぼれ落ちていた。

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