話
□寒いのと暑いの
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「うぁー、、、さみぃー、」
と、両の掌で腕を摩擦で暖めるように擦りながら震える零崎。
「うるさいなー、何回言っても寒いのは変わらないよ」
と、呆れた声の僕。
零崎が僕の家に遊びにきたのが三時間前。お昼時に来るなんてこいつタダ飯食おうとしてるのか、、、と思いながらお昼を出してあげる僕。何て優しいんだ。
戯言だけど、、、
昼食が終わった後、くしゅんと可愛らしいクシャミが食器を洗っている僕の後ろから聞こえた。
「大丈夫?」
「あー、ちょっと寒気が」
「、、、そんな格好してるからだよ、、」
零崎の格好は5月にしてはまだ早いタンクトップに少し短めのズボン、見たときはうわぁ、馬鹿だと引いたほどだ。確かに朝は暑かったけどこれはないだろというくらい。
そして冒頭に至る。
「なーいーたん、何か服貸してくれよー」
「何回もいってるだろ?服だすのが面倒くさいからやだ」
「それ酷くね?!」
なんてのは戯言。
仮にも僕達は恋人同士、付き合ってる。
好きな人を苦しめたくないのは僕だって同じだ。
相手が寒がっていればすぐにでも服を貸してあげたいと思っている。今すぐに。
でもそれをしないのは、
「うー、さみぃよお、、、」
寒がっている零崎が可愛いから。
うん、いや、ね、別に僕はそういう趣味ではないよ。それだったら零崎に無理矢理メイド服を着させて寒さを凌がせてやるよ。やってやるさ。でもなんか可愛いんだよ可愛いんだよ可愛いんだよ!なに腕を抱いて体を震わせてるんだよ誘ってるの誘ってるの?
いや、自分が服を貸してあげないからだけど、、、
「ガチガチガチガチガチガチッ、、、」
、、ちょっと可愛そうになってきた、、
めっちゃ歯ガチガチなっちゃってるよ。
んー、、、
「零崎」
「な、なんだっぷ!」
零崎が僕の方を向いた瞬間に頭から僕がさっきまで着ていた長袖を被せた。
「ははっ、だっぷってなんだよ」
「い、いーたん寒くねぇか?」
「大丈夫だよ、さっきまで着てたし。それに寒くなったら服出してきればいいだけだし」
「おいさっき服だすの面倒くさいからやだって言ってたのはどこのどいっ、、、」
「寒さに耐えてる零崎可愛すぎ」
うるさいからキスしてやったら、どうやら服はいらなかったみたいだった。
■やまなし おちなし いみなし 甘くもないわ
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