BL小説

□訪問/峯大
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訪問





時刻は午前1時を過ぎた頃。
特に音が聞こえてくる事もなく静まり返った室内。
峯はデスクワークを終わらせソファに座りながら一人、酒を飲んでいる。

プルルルルル

そんな静けさを劈く(つんざく)エントランスの今シェルジュからの連絡を告げる電子音。


「峯様、真夜中に申し訳ありません。堂島大吾様がいらっしゃいまして」
「大吾さんが?」
「はい、かなり酔われているようでして・・・」
「すぐに行く。座って待っててもらってくれ」


こんな時間にしかも大吾が自分の自宅を訪れるとはただ事ではないと思い、エントランスへ走り出す。


エントランスに着けば、ソファに座って俯いたままの大吾の姿を見つければ近寄って失礼します。と大吾の隣へ座る


「大吾さん、歩けますか?とにかく俺の部屋へ」


返事も頷きもない相手の腕を自分の肩にかけ、立ち上がらせるが、思いのほかふわりと大吾の身体は持ち上がることに違和感を覚えつつ今はとにかく自分の部屋へ向かわないととエレベーターへ歩き出す





部屋に着けばそのまま寝室へと向かいベッドへとゆっくりと座らせる。
大吾がしっかりと座った事を確認してから自分はキッチンへ向かい、冷蔵庫からミネラルウォーターを取って来る。

「大吾さん、水です」

相変わらず無言で何も行動を起こさない大吾にただただ困り果てるばかりで。
仕方なく水をサイドテーブルに置き床に膝を着き目線を同じ高さにすれば声をかける。

「大吾さん…」
「…」
「…6代」
「プライベートで6代目なんて呼ぶな」
「すみません」
「隣に座れ」


やっと口を開いたと思えば、呼び方に対して注意され。
そんなことより言うべきことがあるだろうと思いつつ、言われるがまま隣へ座る。
お互い喋ることなく静まり返ったと思った瞬間、大吾は隣に座った峯を押し倒し相手の唇に自分の唇を重ねる。
急な出来事に身動きが取れずにいるが、峯は抵抗もすることなく大吾の行為を受け入れている。
すると、峯の顔の横にすれすれで大吾の拳が通り過ぎ、ぼすっ・・・とベッドにそれが落ちる。



「抵抗くらいしろよ…」
「無理です…俺が貴方からのキスを嬉しいと思っているのはわかってるはずです」
「……」
「愛してます、大吾さん」


何があったとは聞かずただ大吾を受け止める峯。
その余裕に安心と苛立ちを感じてしまう大吾。
上体を起こし、大吾の頬をするりと一撫ですると頬にキスを落とす。


「もう遅い…寝ましょう、大吾さん」
「聞かねぇのか?」
「…聞いたら教えて頂けますか?」
「……おやすみ」


ベッドに潜り込み、寝息を立て始める大吾を見届けてから自分はリビングへ行きソファに横になる。

ドアを隔て聞こえないはずなのに、耳の奥では大吾の寝息がこびりついて離れなかった。

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