BL小説

□文字/峯大
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文字





「6代目、報告書です。今日でなくて構いませんので、サインを」
「あぁ」


相も変わらず大吾のデスクの上は散らかっており、何処が処理済みで未処理なのか皆目見当が付かない。
辛うじて空いているスペースを見つければそこに置こうとすれば、峯の手が伸びてきて自分の手から書類を奪われる


「前から思ってたが、峯。字綺麗だよな」
「そうでしょうか…」


確かに大吾への提出書類はできる限り読みやすいようにと心がけてはいるものの、自分の字を綺麗だと思ったことはなく。
とはいえ、大吾に褒められたことは顔に出さないもののかなり嬉しく。


「こんだけ綺麗なら柏木さんにも怒られないのにな」
「…怒られている……と?」
「字くらい綺麗に書けってな。柏木さん達筆だし。やれ書き順だ、そこは払いだなんだって」


一度だけ柏木の書類を見たことがあるが確かに流れるような美しい字であった。
それに比べ、大吾の字はといえばよく言えば男らしい字で。
そしてそういう関係ではないこともわかっているのだが、大吾と親しげに話す柏木に嫉妬を覚える。

一緒に過ごしている期間が違うのだから当たり前なのだが…。


「あの…俺でよければ」
「本当か?でも峯も忙しいだろ?」
「いえ、6代目のお手すきの時にでも……」
「助かる…柏木さん、若いのに示しがつかないとか他の組に馬鹿にされるとか厳しいんだよ」
「わかりました。また何かあれば…」



深々と頭を下げ、会長室を出てゆっくり扉を閉める。
ふぅと息を一つ吐けば、緩む口元をネクタイと共に締め直す。

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