Waxing Crescent

□kapital.11
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過去の経緯に惰性で引きずられる事なく、未来の甘い夢に遊ぶことなく、冷徹に現在を見つめ、ただひたすらに心を凍結し、任務にあたる

過去は怠け者の幻、未来は馬鹿者の希望

いつからこのような思考の持ち主になったのだろう?
あいつに出会ってから歯車が狂ったように私の思考はギシギシ音を立て、滑らかに回らない




『やっとの本国帰還だと言うのに、呼びたててすまない。君たちには今日から私の右腕となり、特別な任務についてもらう。その特別な任務は非合法なものが大半で、全てが闇に消される。諸君の実績にも功績にもなることはない。それを踏まえた上で君らに覚悟を今一度問いたい。ついてくるものは、こちらのバッチを受け取り、医務官にICチップ入りの注射をしてもらうように。断ってもらってもかまわない』

呼びたてた5人の若者は、急な話にキョトンとしていた

『別に功績とか非合法とか興味ないっすけど、給料とか待遇はどーなんすかね?』

『あぁ、それはいまよりは良い。隊舎も隊長クラスのマンションを一人一部屋用意した。艦では個人部屋が精一杯だがな』

『じゃ、僕からも一つ!そのICチップって何の為ですか?』

『それは常に君たちの位置を把握する為だ。情報漏洩させない為、そして裏切り行為が明確になった場合、IC内にある何かが即座に我らの命を断つ。そういう代物らしい。私も詳しくは教えられていない。』

『GPSと爆弾付きの首輪ってやつですね』

『そういったところだな。予は、ザフトの忠実な飼い犬になれ!と言うことだ。無論、私も接種済みだ。他に質問がなければ、返事を聞こうか』


シュヴァリエが選んだ精鋭だけあって、余計な詮索もせず、5人が5人ともバッチを受け取り、体内にICチップを受け入れた。さすが、何にも執着がなく、人をだだ弄び、殺す事に長けた連中だ。シュヴァリエは自身の嗅覚にほくそ笑んだ

『早速だが、明日21時、救出した議員のうち2名に制裁をくだす。方法はいたってシンプルに、自宅で射殺だ。本人以外には手出し無用だ。3:3にわかれ同時刻に行う。では明日20時に再度ここに集合。以上だ。』

『早速任務とはな…』

『いいねー、ゾクゾクしてきた』

『だよなー!ナチュラルだけじゃなく、コーディネーターまで殺れるなんてな、シュヴァリエ隊に来てよかった〜』

『そんなことより、早く引越してぇー』

緊張感の欠片もない隊員をグリーティングルームにのこし、シュヴァリエは、一旦、家路についた


同時刻、イザークたちは取り残された部屋で粛々と書類に目を通し、処理していた

特にこれと言った会話もなく、ただただ紙をめくる音とPCが放つ独特の高周波の音だけがやたら響いていた

イザークは、未だどうしていいかわからず、先走る自分の感情を持て余した
シホもまた、今はこの場にとどまってくれた事が嬉しかったが、追おうとしたイザークの表情からどこに気持ちがあるかはあきらかだった。更にはイザークがこの場にとどまることで、これ以上何か追求されたら…と言う焦りも感じ、シホはシホでまた、自身を持て余していた

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