ROUGE ET NOIR

□* kapital.05
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君の白き手が朱く染まる
朱く朱く染まる程、世界は闇へ

さながら、君は世界を黄泉へ誘う死神のよう

彼が人の夢ならば
彼女は人の絶望





『黒い…』

『これが君の機体、エスペラントだ』

『ほぉ、エスペラントとは、またそれらしい名をつけたモノだな。』

『彼女にぴったりだろう?』

『ねぇ、あと3機は誰が乗るの?』

『ジャスティスにはアスラン・ザラが、残り2機はまだ未定だ。どうしてだい?』


ティエルは、MSを前に熱心に開発データと照らし合わせながら、一項目も漏らさず、じっくりと読み、もう一度アロイスに同じ事を聞いた。


『誰が乗るかそんなに気になるのかい?』

『ラウが乗ればいいのに。あの力持ってるんだし…』


ティエルの両脇に立つ、アロイスとクルーゼは、あまりに自然に口にするものだから、時が止まった錯覚がした。


『まったく君には、敵わないな』


ティエルが、自分の頭に手をかざすクルーゼを凝視していることも気にせず、2人は顔を合わせ目線で確認した


『いいかい、クルーゼ隊長のあの力は君と私以外、誰も知らない事なんだよ。だから、これからは口にしてはいけないんだ。わかるね?』

『そうなんだ…わかった。じゃぁさ、1機はあの子に乗せようよ。その方が楽しく戦えそうだし!』


突拍子もない提案に2人の男は何も言わなかった。何も言えなかった。だか、胸の内はティエルに賛同していた。


『さぁ、上に挨拶を済まして食事にでも行こう』

『うん』

と短く答えてティエルは、自分の横に立たずむアロイスの顔に目をやり、それからクルーゼの差し出された手をとった。
それから、ティエルはアロイスの側を通る時、素早く耳打ちした


『本気で彼に1機渡るようにして』


こんな状況での奇妙で難題な願いに、アロイスはどうしたものかと4機を見上げ途方にくれた。
2人が悠長に食事に出かけ、1人になったアロイスのまわりは、静寂を取り戻した


『君はこれから、人を殺し、傷つけ、騙し、壊し、奪い、あらゆる人の闇の部分を平然とやってのけるだろう。拡大する戦いの世の中を加速させるように…。クルーゼの望みは叶うだろう。』


戦況を大きく動かす4機を見上げ、アロイスは自身が育てた悪魔の近い未来を思い浮かべ、高らかに笑った。




その数日後、アロイスが手回しなしに、偶然にフリーダムと名付けられた1機がラクス・クラインの手引きでキラに。さらには、時を置かずして、アスラン・ザラ、ジャスティス、エターナルがザフトの手から離れ、ラクスの元に集まった第三勢力にすべて渡った

皮肉か否かわからないがティエル、クルーゼ、アロイスの3人の思惑通りに舞台が自然と用意され、笑いがとまらないのであった。
もしも、この世界を創生したる神がいるとしたら、その神を味方につけたと言っても過言ではないだろう

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