ROUGE ET NOIR

□* kapital.08
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『今にわかる』


そう告げると同時にクルーゼは、ティエルの口を塞いだ。愛を注ぎ込むように。先ほどとは違い荒しい口付けに、息を求め薄く開けば、舌が差し込まれ余計に苦しくなる。
しかし、ティエルの身体は抗わず、ぬるりとした感触に自らの舌を絡め、それだけで身体は熱にうなされたように熱く燃えた。
ティエルの抜け切らない力を抜かすように、クルーゼの指先が身体を弄べば、肌を伝う敏感な反応に


……んっ


甘い艶やかな喘ぎ声をたてる


『どうした?』


悪戯に問えば、恥ずかしいのか濡れた瞳を逸らし、口を閉ざして見せる
そんな可愛い仕草を見せられるとクルーゼは一層口付けを深いものへ変えていった


『…んっ……っはぁ』


長い口付けの後、クルーゼとティエルは息を互いに整える為に、ほんの少し唇を離した。しかし、クルーゼの指は身体の上を滑り、視線は熱くティエルを絡め取る

片方の手が頬を撫で、再び距離が近づく


『ラウ、苦しいよ…』

『息がかい?』

『それもだけど、何か身体の奥から…その…わからないけど、苦しいの』

『それは大変だな。すぐにでも楽にして上げたいが、それには、もう少し苦しい思いをさせる事になるかもしれん』

『我慢するから、楽にして。苦しい…』


ティエルの言葉を聞いてか否か


『……っ…!』


首筋にから一気に胸までクルーゼは舌を這わした。少し強引に、それでいて優しく服が脱がされ、露わになる肌を弄ぶ。快楽を与えるクルーゼの舌からは、どんなに身体を捩っても逃れられなかった


『君を抱けるなんて、今夜は特別な夜だな』


優しくゆったりとした愛撫から、性急で激しいものに変わり始めた


『.…っ…ぁ』


ティエルは完全にクルーゼの愛撫に翻弄され、息を乱し甘い声で鳴いた。クルーゼもまた、ティエルが鳴けば鳴く程に、理性をなくし、自身の欲望に落ちて行く


『…はぁ…っん……こんな可愛らしく鳴いてくれるとは、ティエル、君は本当に素敵だよ』


身体の奥深くから止めどなくやってくる快感にティエルは声を抑える事が出来ずにいた

気付けばティエルは意識を手放し、その火照った身体をもクルーゼに託していた
傍に眠るティエルを優しく抱き、乱れた髪を起こさないように梳いてみる

『"愛おしい"とは、このようなものをいうのか…』


ふと今まで考えてもみなかった感情がクルーゼの胸を締め付けた。

どんなに愛したところで、この娘は私を愛しはしない。それでも、私は愛を注ぐのか?いや、違う。私はこの娘に夢を見ているだけだ

素肌から伝わる鼓動に目を細めるが、加速度をつけて老いる自分の身体と永遠に老いることのない小娘の身体がささやかな夢を打ち砕いた




気に入った獲物は
ゆるり、ゆるりと弄び
じわり、じわりと絞め殺す

その眼差しは、冷たく鋭い刃
その微笑みは、嫋やかな悦楽


これが私の夢、私の愛する者の姿
世界が産んだ愛おしい悪魔

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