ROUGE ET NOIR

□* kapital.09
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あの日から、私はずっと嘘を付いてきた
生きると言う嘘を…
名前も嘘、経歴も嘘……嘘ばかりだ
全く変わらない世界に飽き飽きし、それでも私はこの世界を諦める事が出来ない
ならば、世界を、人を裁いて此の手で裁いてやろう
そして、手に入れた
力を……… 君と言う剣を………




傍目から見ても、クルーゼのティエルに対する態度は過保護で、たまに見える首筋には赤々とクルーゼが付けたと思われる痕が見えた
ヴェサリウスに戻るシャトル内でも、クルーゼは片時もティエルを離さず、その傍におき、ティエルも仔猫のようにクルーゼに甘えていた
そんな様子にイザークは、終始苛立ち、握り締めた拳からは地が滲みそうだった

(なんなんだ、突然降って湧いて最新型のパイロットだと?しかも、隊長の女と来たもんだ…ックソ!胸くそ悪い!!)

自分を差し置いて新型を得たティエルへの嫉妬からの苛立ちでは無く、クルーゼの寵愛を受け嬉々としているティエルへの嫉妬からの苛立ちだと、イザークはわかっていなかった。が、クルーゼは多少ならず感じとっていた。だからこそ、尚更、目に付く場所にさえ痕を刻んでいたのだ

それから地球に降下し、スピリットブレイクが発動されるまで、これといった出撃もなく、ティエルの力を目にする事はなかった。その無駄な時間が隊員たちの間でティエルに対する嫉妬や妙な噂をたてた
それでも、クルーゼもティエルも何ひとつ気にする様子もなく、イザークとアデスがヤキモキと気を揉み

『隊長、ティエルはいちパイロットですよね?それなら、そう扱うべきだと!』

『イザークの言う通りです、隊長自らの風紀を乱されるのは、いかがなものかと』

スピリットブレイクに向けて、忙しいクルーゼに2人は苦言を呈したが

『ティエルは、私の大切な姫君だ。それを大切に扱うのは当たり前ではないか?それに、今にわかる、我々ザフトにとっても大切な者だと。』

相変わらず、人を煙に巻くような物言いに、イザークは苛立った。
しかも、呑気に宙に漂って他人事と決め込んでいるティエルには、尚更に。

『おい、ティエル!貴様は隊長のご迷惑だと思わなのか!!』


ティエルは、自分に向けられた苛立ちの矛先をかわすように、クルリと向きを変えると

『別に〜。言いたいやつには言わせておけばいいんじゃないのー』

『ティエル、隊長を前にその態度は…もう少し』

『ティエル、おいで。皆、君の自由奔放な態度を良しとしていないのだ。人前では少し…そうだな、私の傍に立つようにしてもらえぬか?』

『はーい』


宙を泳ぐティエルの手を取り、傍に立たせながら


『まだ不満かね?ならば、君の隣に立せようか?』


不適は笑みをこぼしながら、クルーゼは、その気もない言葉を投げかける。ティエルも苛立つイザークの姿を目にクスクスと笑う。


『お断りです!!』

『兎に角、隊長。ティエルに対する態度を少しお改めください。風紀の乱れる素になりかねませんので』

『わかった、アデス。気をつけよう。』


不服そうなイザークの肩をたたき、アデスは踵を返しクルーゼの部屋を後にした。イザークも一礼し、アデスに続き出て行った。

『良いとか悪いとか、誰が決めるんだろうね〜』

『さぁな、ただ、人はその行動の果てには結果という答えがついてくる。例外なくな。』


いつもは聞き流すティエルだったが、このクルーゼの言葉はしっかりと記憶した。


『あの子の瞳、いつ見ても真っ直ぐで綺麗だよねー』

『気に入ったのかね?』

『うん、面白いからー』


飛んで行ったオモチャを追いかけるように、ティエルはイザークを追って出て行ってしまった。


『ふむ…こればかりは教えても、ティエルは変わらぬだろうな』



心から憎しみを忘れ
この恋に心揺るがした日は何日あったろう
人々が"運命"という名の剣に斬り伏せられた人の
身の上が気になるように……

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