short story

□sweet time
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『あいつ、まさか忘れてるんじゃ…』


久々のプラント
久々の休日

俺は馬鹿みたいにひとり恋人がくるのを待つ


『ま、まさかな…』


通信とメールだけの日々から解放され、やっと会える日
互いに待ち望んだ日だ、忘れる訳がない

待ち合わせ時間より少し早めに来ていたイザークは、コツコツと秒針のように足を鳴らしながら、5分、10分と無駄に過ぎて行く時間に苛立ちを露わにする


『あれ?イザーク、こんなところで何しているんですか?』

『っ!!関係ないだろ!』


何処かあどけなさが残る翡翠色の髪の持ち主の方を振り返れば、今は会いたくなかった面々が連なっていた


『あ〜、もしかして姫君ちゃんに、また待ちぼうけくらってたり?』

『また、とはなんだ!また、とは!!姫君は、そんなんじゃない!!』

『へ〜、こないだ雨の時間待たされて風邪ひいたの誰だっけか?』

『……』


同室のディアッカには隠せない事実


『コーディネーターに風邪をひかせちゃう姫君さん、凄いですね』

『だろう?しかも、あのイザークにだぜ?』

『もう、やめろよ…イザークだって風邪ぐらいひくだろう』


藍色の髪の少年は、イザークをからかう2人に半ば呆れながら口を挟む


『貴様に同情される覚えはないぞ!アスラン』

『同情…って訳じゃ…ないさ』


褐色の肌の肩越しに愛しい恋人の頭が見えたのをイザークは、見逃さなかった


『遅っ…』


ディアッカを押しのけ、久々に目にした姫君は、胸元から肩にかけて大きく開いた上品で女らしい私服
その姿に言葉を失い、一瞬見惚れたが、イザークはすぐさま、自身の上着で姫君を頭からすっぽり覆い隠し、その胸に抱き寄せた


『兎に角、お前達さっさと行け!!さもないと、今度撃ち落とすぞ!!!』

『あの…イザーク?』

『お前は黙ってろ』


抱きしめる腕に力がこもる
姫君は、訳がわからなかったが、これまた久々のイザークの匂い、温もりに包まれ、幸せに浸るようにころんと、大きな胸に身体を預けた


『折角だし、一緒にお茶ぐらいしませんか?』

『断る』

『イザークは他の男に姫君ちゃんを見せたくないんだよなー』

『そうなのか?イザーク。あんなに可愛いのに』


ポツリこぼれた一言にイザークの怒りに火がついた


『姫君は可愛いさ!だから、お前達みたいなやからに見せれるわけないだろ!』

『そう言うものなのか…』


怪訝そうなアスランにニコルが


『イザークは独占欲が強いんですよ、アスラン』

『そう言う事。俺なんて姫君ちゃんから通信入る度に部屋追い出されるんだぜ?』

『煩い煩い!お前達に付き合ってられん。姫君、行くぞ!』


ぷいっと方向を180度変え、姫君の腕を引っ張り歩き出す
姫君は、顔を上着から出し、イザークについて行きながらも振り返り、にっこり笑って手を振って見せた


『あんな奴らに笑って見せる必要ないぞ』

『そうなの?イザークの大切な仲間だし…って思ったんだけど』

『お前は俺だけ見ていればいい』

『はい』


少し頬を赤らめながら、返事をする姿がまた愛らしい
人目も気にせず、ギュッと抱きしめ、口付けを落とす
数ヶ月ぶりの温もりを埋めるかのように


『姫君、好きだ』

『うん、私も好きよ』


姫君に掛けていた上着をとり、エレカに優しくエスコートしながら、私服姿を見直し


『服、似合っている…』


照れるイザークに、姫君は嬉々と瞳を輝かせ


『本当?ありがとう!!イザークの為に昨日の買ったんだよ。喜んでくれて良かったー』


遅刻の苛立ちも今や何処かへ消え去り、今は喜びでいっぱいだ
姫君は、気付いていないだろうが、その何気無い言葉も笑顔も、全てが俺を幸せにする


『お前がいるだけで、俺は十分幸せだ。愛してる、姫君』


頬に手をあてがい優しく、甘くキスを交わす

激化する戦況の中、殺伐とする心を癒してくれる俺の天使
プラントにお前がいるから、俺は戦える
これから何があっても、守ってやる、この命をかけて

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