short story
□僕たちの至福
1ページ/1ページ
私は来る日も来る日も、毎日カレンダーを黒く塗りつぶす
塗りつぶす事、1か月
生きているだけで、素晴らしい
なのに、さらに困難に立ち向かい頑張ってる君は、素晴らしい
だから、精一杯の笑顔で君を迎えるんだ
カレンダーも、今日は塗りつぶさない
『こちらボルテール、イザーク・ジュール隊 入港許可を』
"こちら本部、ボルテールの入港を許可します。お疲れ様でした。ジュール隊長は、帰投次第、議会への出頭命令が出ていますので、よろしくお願いします。"
『イザーク・ジュール、了解した』
隊の誰一人欠ける事なく、無事帰還出来た安堵と、モニターに映し出されたオペレーターの笑顔が、疲れた心に染み渡る
入港が完了し、一歩足を踏み出すと、まだ施設内だと言うのに、重い重圧が消えて行く気がした
『お疲れ様です、ジュール隊長』
ファイルを片手に敬礼する姫君の姿に、目を見開く
『お前…』
『お疲れ様です。議会にはこちらのファイルをお持ちください。』
先程までオペレータールームにいたはずの彼女。近いとは言えないのに、出迎えてくれた事にイザークの心はときめいた。
『あ…あぁ、わかった。わざわざ、すまない。』
互いに公私を分けているが故、抱きしめあったり、甘い言葉を交わしたりしなかったが、見つめ合う瞳は喜びに満ちていた。
差し出されたファイルを受け取る時、微かに指先が触れた。
『お帰り、イザーク』
小さな小さな声でそっと囁かれた言葉は、これ以上ない幸せをイザークにもたらした。
『あぁ、ただいま』
そっと姫君の頭を引き寄せ、額にキスを落とす
『イ、イザーク?!』
『今日は特別だ。ありがとう、姫君。愛している』
この言葉を聴きたくて
この言葉を言いたくて
君と笑顔をかわすため
僕たちは、命をかける
守るために
生きるために
未来を紡ぐために